防空壕の前通る 外国人捕虜の姿 長崎の保存問題で証言

 九州新幹線長崎ルート建設現場の長崎市天神町で確認された防空壕(ごう)群の保存を求める市民団体が26日、市に要請書を提出した。メンバーで被爆者の川口和男さん(89)=銭座町=が、長崎原爆当日に防空壕群の前を外国人捕虜が通過する様子を証言するなどして歴史的価値を訴えたが、市側は保存しない姿勢を崩さなかった。
 確認された防空壕は15カ所。長崎ルート整備に伴い、このうち11カ所が今月末までに、残りの4カ所も年内に取り壊される計画。
 要請書を提出したのは、「銭座防空壕群を保存する連絡会」(中村住代氏ら共同代表)。市議会会議室での協議には同会から10人が参加。川口さんは、福岡俘虜(ふりょ)収容所第14分所の外国人捕虜と防空壕群を描いた自作の絵を手に、「日本人の看守に続いて捕虜の8人程度が一列で防空壕の前を通った」と証言した。
 市は、防空壕群を含む銭座地区全体の防空壕と外国人捕虜との関係性などを示す説明板の設置を検討する方針。同会は「説明板だけでは価値が伝わらない」と保存を求めたが、市側は「特別な防空壕ではない」として保存しない考えをあらためて示した。

防空壕群と外国人捕虜を描いた絵を手に証言する川口さん=長崎市議会会議室

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