【わが社のホープ】〈三星金属工業製造部製鋼課電気炉・分析係、山田豊氏〉 効率良く、的確に〝製品に味付け〟

 電気炉で鉄スクラップを溶解し、精錬してレードルに出鋼する。その際、シリコン、マンガンなどの副資材を投入し、製品の規格内に調整する電気炉担当の班長だ。県央地区の高校卒業後に入社し、今年で18年目の35歳。

 「電炉メーカーは電力多消費産業。使用電力をいかに下げ、かつ品質の良い製品を送り出すことに注力する。溶解、精錬時に副資材を投入し不純物を除去し製品に〝味付け〟を行うのが役割。製造する鋼種によって目標値が異なる」と山田氏。

 溶解を補助する酸素の吹き込み作業の一方で、酸化鉄を還元するため、カーボンを吹き込む作業を行う。そのバランスで品質が決まる。

 まさに時間との勝負。「時間を見ながら下工程に迷惑がかからないよう細心の注意を払う。燃焼中は次のチャージの段取り、副資材の準備にかかる。要領良くやることを心掛ける」。

 1チャージは約1時間。鉄スクラップの投入量は約95トン。HS、H2など品種別配合はおおよそ定められているが、その時のカーボン成分を見極めながら、副資材の投入量を調整。歩留まり効率を上げる。

 耐熱服で完全防備し、炉の前から長い竿状の先端についた柄杓(ひしゃく)のようなものですくい取り、型に流し込み、分析装置にかける。

 電炉には「火花判定」という用語がある。溶鋼を鉄板に流した時、線香花火のような発火が見られカーボン値を経験とカンで見極める。

 うれしい時は事前にカーボン値の見極めができ、出鋼した時の成分が自分の思った通り、規格内に収まった時だ。

 こだわりは「安全確認を怠らず、設備点検をしっかり行うことでトラブルを防ぐこと」。

 先輩から学んだ姿勢は「炉内雰囲気の変化を見逃すな」。刻々と変化する状態に合わせた工程の進め方を学んだ。班長として作業員の負担軽減に心を配る。「それには仕事の段取り、進め方、的確な指示を出すことが求められる」。

 【抱負】

 「質の良い製品がお客様に届き、いつまでも国内外で使用されることに社会的使命と喜びを感じる。安全最優先、品質第一を合言葉にいつまでもこの仕事が続けられるように頑張りたい」。

 【上司から】

 赤塚英之製造部製鋼課課長談「班長として職務を全うし後輩の面倒見が良い。電気炉に関する他の知識も取り込んで部下に伝え、会社全体のレベル向上を考えられる人材になってほしい」。合同製鉄グループでは、毎年技術交流会を開催しており他の製造所との交流が良い刺激になっている。

 【保有資格】

 天井クレーン、ガス溶接、フォークリフト、玉掛け、ショベルローダー、アーク溶接など19資格。

 【プロフィール】

 家族は夫人と一男一女。趣味は高校野球の観戦。入社の動機は「役割を終えた鉄が世に出回る製品になることに魅力を感じたから」。

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