FIA-F4もてぎ:角田裕毅がシーズン7勝で王座獲得。HFDP初のチャンピオンに

 FIA-F4の今季最終大会がツインリンクもてぎで開催され、2戦ともポールポジションは名取鉄平(HFDP/SRS/コチラレーシング)が獲得。決勝では第14戦こそ名取が優勝を飾ったものの、チャンピオンは第13戦を制し、第14戦で2位に入った角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)が獲得した。

 最終大会を前に、すでにチャンピオン候補は3人に絞られ、ポイントリーダーの角田を追いかけるのは、名取と小高一斗(FTRSスカラシップF4)のふたり。

 木曜日の専有走行では名取、角田、小高の順で並んだが、雨に見舞われた金曜日の専有走行では石坂瑞基(TOEI BJ Racing F110)がトップで、小高が2番手、角田が3番手で、名取が5番手に。いずれにせよドライもウエットも僅差であっただけに、予選も同様に接戦となることが予想された。

 土曜日に行われた予選は、前日までの雨が残ってウエットコンディションからのスタートとなった。なかには果敢にもドライタイヤで走り出した者もいたが、すぐにピットイン。結局、全員がウエットタイヤでの走行となった。

 まずは2分10秒台での攻防が続いたが、折り返しのあたりから2分9秒台に突入。最初に壁を乗り越えたのは名取で、そのままじわりじわりとタイムを縮め続け、ベストタイム、セカンドベストタイムともトップでWポールを獲得する。一方、角田は4番手と2番手、小高は8番手と7番手。小高はやや厳しい状況に追い込まれてしまう。

「Wポールはすごく嬉しいです。昨日の練習で、雨(ウエットでの感触)はそんなにいいわけじゃなかったんですが、今日の予選に合わせて詰められたのも良かった。ドライはかなりいい感じで仕上がっているので、決勝はスタートを決めて逃げ切るだけなので、冷静に頑張りたいと思います。正直、タイトルのことは、意識しているのは意識しているんですが、タイトルよりも優勝することの方が今は重要だと思うので、優勝してからタイトルを意識します」と名取。

 完全なドライコンディションとなった第13戦決勝レース。名取と角田の間に入ったのは、これが自己最上位となるルーキー、小倉祥太(DENSOルボーセJSS F4)と大滝拓也(SRS/コチラレーシング)。名取にしてみれば、チャンピオンを争う角田を近寄らせないよう、このふたりに何としても踏ん張ってもらいたかったはず。

 だが、角田はスタートでまず大滝をかわし、5コーナーで小倉もパス。オープニングの1周だけで2番手に浮上した一方で、その間に名取はほぼ1秒半の差を築いていた。さらに2周目には小高が4番手に浮上。

第13戦ではポールシッターの名取鉄平(HFDP/SRS/コチラレーシング)が角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)抑える展開が続いたが……

 その時点で、名取は角田との差を広げていたが、3周目に入ると状況は変わって、逆に差を詰められるように。じわりじわりと近づいてプレッシャーをかけ続け、9周目の130Rで角田は待望のトップにおどり出る。

 さらにその後方では小倉と小高による3番手争いも激しかったが、昨年のスーパーFJもてぎチャンピオンの小倉は、抑えるべきポイントを熟知しており、なかなか小高に逆転を許さない。

 勝負ありか……と思われた3番手争いながら、最終ラップの90度コーナーで小高はインを刺し、小倉を押し出す形で前に出る。だが、これは小高の危険行為と判定されて、30秒加算のペナルティを受けて、大きく順位を落とすことに。

 結果的に表彰台には立てなかったものの、小倉が3位を獲得した。なお、この時点で小高に王座獲得の権利は喪失している。

 そして逃げ切りなって、チャンピオンに王手をかけた角田は7勝目をマーク。2015年に坪井翔が打ち立てた最多勝記録に並ぶこととなった。

「正直こういう結果になるとは思っていなくて、2位狙いでした。昨日まであまり調子は良くなかったですし、予選は(テール)ランプを点け忘れて、ピットに戻ってからリズムを乱していたりもしていたので。明日も勝って決めます」と角田。

■最終決戦の第14戦はセーフティカーで幕切れ

 日曜日の第14戦決勝レースは、前日に3位になった小倉がフォーメーションラップでドライブシャフトを破損したため、スタートディレイとなって、1周減の11周で競われた。そんなハプニングにも動ずることなく、フロントローのふたりはともにスタートを決めて、そのままの順位で1コーナーに飛び込み、これに予選4番手だった佐藤蓮(SRS/コチラレーシング)と大滝が順位を入れ替えて、さらに予選9番手の菅波冬悟が一気に順位を上げて続くこととなる。

 1周目は上位がずらり連なる格好だったが、2周目からは名取と角田が逃げ、その後ろで佐藤と大滝、菅波、小高が争うように。だが、その3番手争いは、5周目に佐藤と大滝が接触で順位を落とし、その直前に藤波を抜いていた小高に決着が。最後に一矢報いたい小高は、やがて名取と角田にも近づいていく。

 そんななか、角田は必死に名取を攻め立てていくが、その度にガードを固められて逆転を許されず。小高も加わり、3台でのトップ争いとなった直後に、セーフティカーがコースイン。ヒートアップしたインディペンデントカップのトップ争いで接触があり、1台がコース脇に留まっていたからだ。それが9周目のこと……。そのままチェッカーが振られることとなり、レースは予想外の幕切れとなった。

 3勝目を名取が獲得するも、「優勝よりチャンピオンを逃した悔しさの方が大きいです。今年1年間を自分で点数をつけるなら、0点ですね。自力で優勝できたのは、今回だけのようなものですし、自分の思うようなレースがほとんどできなかったので」と笑顔は控えめ。

チャンピオンを手にした角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)

 そして2位でゴールの角田が、HFDPドライバーで初のチャンピオンに輝いた。「何回か抜けそうなチャンスはあったんですけど、抜くときはリスクが多くて、ぶつかってリタイアみたいなことがあったら、シーズンが水の泡になってしまうので。チャンピオンもかかっていたし、それを目標に1年間戦ってきたので、チャンピオンが獲れて良かったです。実感はあまりないですけど」と角田。

 さらに1週間前に鬼籍に入ったHFDPのチーフエンジニア、川口里巳氏への感謝もつけ加えた。

「本当はオートポリスで決めて、2年間一緒にやってきた川口さんに、直接チャンピオン獲得の報告をしたかったんですが、僕がだらしなくて……。この1週間、後悔の気持ちもありましたが、天国の川口さんにチャンピオンになった姿を見せることができて良かったです」

 一方、インディペンデントカップも最後まで激戦を極めたが、牧野任祐の育ての親でもある植田正幸(Rn-sports制動屋F110)が、初代チャンピオンに輝くこととなった。

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