豪州SC最終戦:スコット・マクローリン初戴冠、SVGは痛恨のペナルティに泣く

 11月24~25日に2018年シーズン最終戦を迎えたVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーは、DJRチーム・ペンスキーのスコット・マクローリン(フォード・ファルコンFG-X)が選手権ライバルとなったSVGこと、レッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)のシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB)を振り切り悲願の初タイトルを獲得。一方のSVGは勝利を飾りながらも、まさかのピット給油作業ペナルティで後方に沈むなど、その裁定に禍根を残す結末となった。

 タイトルの行方は二転三転、文字どおりの“シーソーゲーム”となった最終戦ニューキャッスル500は、土曜のレース1から王者候補の一騎打ちという密度の高いタイトル決定戦となった。

 名門ペンスキーとRBRAのトリプルエイト・レースエンジニアリングが予選からがっぷり四つの直接対決構図となった争いは、2016年以来の王座奪還を期すSVGがニューキャッスル市街地コースを攻略し、意地のポールポジションを獲得。

 フロントロウにチームメイトで現王者のジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)、セカンドロウにマクローリン、ファビアン・クルサード(フォード・ファルコンFG-X)のシェルVパワー勢が並び、ともにチャンピオン獲得に向け総力戦の舞台が整った。

 注目のスタートでは4台そろってまずまずのダッシュを決めたものの、現チャンピオンがチームメイトに先行し、ウインカップ、SVG、マクローリンのオーダーで1コーナーへ突入。するとわずか数ラップでSVGを仕留めたマクローリンが、首位ウインカップの背後でプレッシャーを掛け、初王座獲得に向け勝利への執念を燃やす走りをみせる。

 すると混乱に次ぐ混乱に見舞われたレースは最初のピットストップ後にその口火が切られ、首位ウインカップ、4番手クルサードが同時作業となったアウトラップで2台は接触。ターン11でクルサードのマシンにヒットしながら強引にインをこじ開けたウインカップがサイド・バイ・サイドでコーナーをクリアするも、続くターン12でアウト側に立たされた2017年チャンピオンはウォールに押しやられタイヤバリアにスタック。

 これでマクローリンの援護射撃を完遂したかにみえたクルサードだったが、レース中盤の42周目には1コーナーでウインカップの逆襲に遭いリヤエンドを失うクラッシュを喫すると、直後を走行していたニック・パーカット(ホールデン・コモドアZB)、ティム・ブランシャード(ホールデン・コモドアZB)がフォードのマシンに突っ込み、セーフティカー(SC)導入の引き金に。

 レース再開後はピット作業タイミングを上手くはかったマクローリンが首位に浮上し、SVGはさらなる燃料補給のため2度目のピットを敢行し6番手までドロップ。しかしここから怒涛のチャージを見せた王座獲得経験を持つタイトルコンテンダーは、ファイナルラップを目前にしてマクローリンの背後まで這い上がることに成功し、最後の勝負へと挑んでいく。

最終戦でのタイトル獲得に向け、一騎打ちの構図で臨んだ2016年王者シェーン-ヴァン・ギズバーゲン(左)とスコット・マクローリン
タイトル候補の直接対決をアシストすべく、チームメイトらもドッグファイトを展開
最終ラップの燃料切れでスローダウンのマクローリンをかわしたSVGが勝利かと思われたが……
2回目のピットストップの際に、燃料給油中のジャッキダウンを取られ痛恨のペナルティ

 そして迎えたファイナルラップ。2秒以下に縮まった両者のギャップは、ラップタイムペースから見てSVG有利。オーバーテイクはワンチャンスか……と思われたその瞬間、シェルVパワーのカラーリングをまとうフォード・ファルコンFG-Xを異変が襲い、突如のスローダウン。

 燃料が尽きたマクローリンを最終セクターでかわしたSVGは、ランキングで2ポイント先行する値千金のトップチェッカーを受け、力なく惰性でコントロールラインを横切ったフォードは4秒差の2位に。

 これで日曜の2018年最終ヒート、レース2で雌雄が決するお膳立てが整ったはずのリザルトは、しかしここでも急転し、レース後にSVGのピット給油作業が審議対象となり「給油リグが車体に接続された状態のままジャッキダウンした」として、スチュワードはドライブスルーペナルティを宣告。

 しかしレースはフィニッシュを迎えた後だったため、25秒のタイム加算ペナルティに換算されたSVGは優勝から5位にまで転落。これで日曜を前に53ポイントリードに変わったマクローリンは、明けた今季最終予選でもフロントロウを奪取すると、前日同様の95ラップを危なげなく走破。

 ポール・トゥ・フィニッシュを飾ったエレバス・モータースポーツのデビッド・レイノルズに次ぐ2位表彰台でチェッカーを受け、25歳のマクローリンが2013年のシリーズデビューからDJRチーム・ペンスキーへの移籍2年目で念願の初チャンピオンを獲得した。

「なんてこった!! 僕がタイトルを獲ったなんてまだ信じられないよ! チームのみんなはシーズンを通して懸命に仕事を続けてくれていたし、残り30周は自分の人生で最も長い30ラップだったよ」と、初戴冠の興奮と喜びを爆発させたマクローリン。

「そして(日曜のレースは4位に終わった)シェーン(ヴァン・ギズバーゲン)には心からのリスペクトを表したい。昨日のことも含め、今季は自分にも似たようなシチュエーションが起こったこともあったし、それを思い出して心底ツラかった。僕らはシーズンを通じて全力で戦ったし、それは地獄のような勝負の連続だったよ」

 一方、レース直後にFOXスポーツのTVインタビューでは放送NGワードの激しい表現で悔しさを表現していたSVGだが、チームは抗議を行わないことを決め、「僕たちはできる限りのことをやった。シーズン序盤に同様のペナルティを犯したチームは罰金とチームポイント剥奪の裁定だったが、それを今さら言っても仕方のないことなんだろう。スコッティ(マクローリン)にはおめでとうを言いたい。彼らは価値ある競争相手であり、価値あるチャンピオンになったんだ」と、初戴冠のマクローリンに対して祝福の言葉を贈った。

これが引退レースとなったクレイグ・ラウンズは、スペシャルカラーのマシンをドライブした
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2013年のシリーズデビュー以降、GRMのボルボS60での活躍が認められペンスキー入りしたマクローリン。その期待に応える初戴冠となった

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