【平成の長崎】諫干開門差し止め 長崎地裁が判決 平成29(2017)年

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門調査に反対する周辺の農漁業者や住民ら453の個人・法人が国を相手に開門差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁は4月17日、開門差し止めを認める判決を言い渡した。開門した場合「農地に塩害などが発生し、営農者の生活基盤に直接関わる」と指摘した。

 差し止め訴訟関連で、地裁は2013年の仮処分決定と、これに国が異議を申し立てた「異議審」での2015年の決定に続き、三たび開門差し止めの判断を下した。2010年に開門を命じた福岡高裁確定判決と逆の判決。司法判断のねじれ状態は変わらない。

 差し止め訴訟は、事前の和解協議の決裂で今回の判決に至った。協議で国は、開門をせずに解決するよう促した地裁の勧告に従っており、今後は国が控訴するかが焦点となる。

 営農者らは2011年4月に提訴。開門すれば周辺の農漁業に被害が生じ、住民は湛水(たんすい)被害などを被り、国の対策工事では防げない-などと主張。一方の国は「万全の対策を講じ開門するから営農者らの権利を侵害しない」と反論していた。

 判決は異議審決定をほぼ踏襲した内容。松葉佐隆之裁判長の判決文が代読された。最も開け幅が小さい制限開門でも「農地に塩害、潮風害、農業用水の水源の一部喪失の発生する高度の蓋然(がいぜん)性がある」と指摘。国の事前対策工事は「実効性に疑問がある」とした。

 開門しても「諫早湾および有明海の漁場環境が改善する可能性は高くない」とし、開門調査についても「一定の公共性があるが、(漁獲量減少などの原因について)解明の見込みは不明」と判断した。

 判決を受け、山本有二農相は「判決内容を詳細に分析し、関係省庁と連携しつつ適切に対応したい」、中村法道知事は「重要な判決。国は控訴することなく開門しない方向で真の有明海再生を」とそれぞれコメントを出した。開門反対派弁護団は、国が控訴するかどうかを見極めた上で対応を決める。

 訴訟は結審後、昨年1月から和解協議入り。国は開門に代わる漁業振興基金案による解決を目指したが、主張の隔たりは埋まらず、今年3月に協議は決裂していた。
(平成29年4月18日付長崎新聞より)
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長崎地裁の判決を受け「勝訴」などの垂れ幕を掲げる開門反対派の弁護士=長崎地裁前

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