災害ボランティアの心構えと食いぶち 食べ物、飲み物、そしてトイレのポイント

水害後の泥のかき出し作業

災害ボランティアをされたことはありますか? 
災害ボランティアとは何でしょう? 

私は被災地に行って、困っている被災者に「寄り添う人」のことだと考えています。もちろん、水害の後の泥のかき出しや、地震の後の片付けなど体を使うボランティアもありますが、それだけではありません。これといって何もしなくてもいいのです。ボーッと歩いていると、近寄って話し掛けてくる人が必ずいます。黙ってお話を聞かせてもらいます。聞いてあげるのではないのです。「あーそうですか。大変でしたね。それで……」というふうに相手の気持ちに寄り添い、お話をするのです。話が終わったら、また歩いていると、また別の誰かがやって来て「崖崩れが怖かったよ。突然だった……」と話し掛けてくれます。じっとまた聞いて会話します。こんなことをして1時間1000円などとお金を請求する人はいません。ボランティアは無償の奉仕活動をする人を指します。見返りのない自己犠牲の奉仕活動です。

阪神・淡路大震災は「ボランティア元年」といわれ、延べ137万7000人のボランティアが、個人で、自主的に、被災地に来てくださいました。私も被災者でしたから、その恩恵に浴しうれしかったです。
実際に来てくださったボランティアの年代は20歳代が約半数です(図)。仕事別に見ると、「大学生、短大生、専門学校生」が45%、次いで多い順に「フリーター、アルバイター、無職」21%、「高校生以下」12%、「主婦」9%、「会社員」8%、「自営業」4%、「定年退職者」1%です(兵庫県民生生活部調べ)。
被災地は、地震、津波、風水害、河川の氾濫、噴火、豪雪、原子力発電所の事故など、被害状況はさまざまです。危険な目にも遭います。なぜこんなに多くのボランティアが交通網が全面ストップの中、被災地を目指して歩いてまで来てくれたのか、今でも疑問です。

阪神・淡路大震災一般ボランティア活動者の人数

   

出向くときには、必ず自分の食いぶちを

「食いぶち」とは、「自分が食べる食べ物」のことをいいます。どんな災害でも現地ではお腹が空きます。飲まず食わずはムリです。被災地に迷惑をかけないように自己完結型の作法を心掛けたいものです。

(1) 自分の食べ物、飲み物は各自持参します。腐りやすいもの、生ものは避ける。現地では煮炊きができないので、封を開けたらすぐ食べられるものを用意する。食べ残しやゴミは持ち帰る。猛暑日もあるので日陰に食べ物を置いておく。クーラーボックスがあるといいですね。

(2) 飲み物を必ず持参する.水道が停止し井戸水が濁るなどで現地の水は使えません。特に猛暑日は水分の補給が不十分になりがちなので十分な量を用意し、熱中症対策を心掛ける。汗で水分を失うと同時に塩分も失うので補給します。

(3) 働く場所は、ほこりや泥、浸水などで衛生環境が損なわれているときもあります。感染症防止のために食事の前には手洗いを十分する。水道が停止している場合が多いのでアルコール消毒剤、ウエットティッシュなどを持参します。

(4) 飲食の後はトイレが必要。簡易トイレを持参し、その後持ち帰ります。自己完結を心掛けましょう。

(5) 体調管理に気を付ける。特に体力が必要な仕事をする場合はエネルギーの多い栄養のバランスの取れた食べ物を用意しましょう。

(6) 仕事の途中で休養を取る。連続性のある仕事(例えば泥かき、がれき処理など)の場合は、1時間ごとに休憩を取り健康管理に努めます。体調を崩すと被災地に迷惑をかけるので、体力に応じた奉仕をしましょう。

(7) 仕事時間は働く場所の気温により左右されるので、一概には言えません。35度以上の気温の場合、仕事時間は注意すること。その日は休むか、時間を短くしなければなりません。

 

持参する食べ物は何がいいか?

(1) 主食-電子レンジ、熱湯がなくても食べられる物を選ぶ。おにぎり(梅干し・漬物入り)、カップ麺(豚などの油がない麺を水や飲み物でもどすとよい)、生物が入っていなくて、調理法では炒めたり、揚げたりしたおかずとセットになった弁当などがよい。つまり、しっかり火の通ったものがよい。

(2) おかず-サンマ、サバ、ツナの缶詰、魚のソーセージ、漬物の缶詰、瓶詰、チーズなどがよい。生野菜のサラダ、生魚入りの寿司などは不適当。

(3) 果物-ミカン、リンゴ、バナナなど。

(4) 菓子-生菓子以外はすべてよい。塩アメは重宝がられる。気温が高い場合は腐敗しにくいものを選ぶ。

 

持参する飲み物は何がいいか?

(1)飲料水
(2)その他の飲み物
 麦茶、紅茶、コーヒー、スポーツ飲料など各自好みの飲み物がよい。
1日3リットル用意するとよい。

その他に注意することは何でしょう?
現地では冷蔵庫に入れて保管できません。地球温暖化の影響で気温が30度を超える日が多くなっています。持参した飲食物の置き場所は、直射日光の当たらない日陰の場所を選ぶと安全性が高いですね。夏は、保管中に飲食物の内部温度が上がり、おいしさが損なわれるばかりか菌やウイルスが繁殖し、食中毒の発生を招きやすいので注意が必要です。

 

質問:排便や小便はどう持ち帰る?

Q. ボーッと立っているだけでなく、何か手伝わなければ……と思いますが、いかがですか?
A. 被災地の人の多くは、仕事や住まいを失い、途方に暮れているのです。自分の指1本でも何か役立つことがあればと駆け付けて見守りましょう。その心意気がしなびた被災者の心に復興の炎をかき立てる。そう信じてください。

Q.1日でも半日でもいいですか?
A. 被災地に自分の足跡を残すつもりで行ってはダメです。足跡など決して残さない気持ちで行きましょう。被災地を実際に目で見て、匂いを嗅ぎ、肌で感じることが日本に住む私たちのせめてもの“気遣い”と言えましょう。企業人も働きの手を止めて、無償の感性をよみがえらせてはいかがでしょうか。
被災地へ行きましょう。現場でしか見えないことが山ほどあります。

Q. 質問をするのが恥ずかしいですが、排便や小便を持ち帰るというのは臭くないですか?
A. コンパクトに密封して持ち帰ります。ただ、簡易トイレの商品の中で、凝固剤、消臭機能、殺菌機能のある物を購入することを勧めます。重労働で汗をかくと、トイレにはあまり行かないで済むようです。1日約6個ぐらいが必要です。

(了)

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