石木ダム事業と川棚町 地権者トップ当選 議会は変わるのか 両町議に聞く

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 4月の川棚町議選で、石木ダム反対地権者の炭谷猛氏(68)が、16人の候補者のうち最多となる795票を獲得し初当選した。過去3回、石木ダム事業推進の決議案を可決するなど長年にわたり「推進派」が多勢を占めてきた町議会は、地権者の参入で変わるのか。炭谷氏と、選挙戦でダムの必要性を訴えた田口一信氏(70)=3期目=に聞いた。

◎炭谷猛氏(68)/「民意」を甘く見るな

「町議選の投票結果は『ダム不要』の民意だ」と語る炭谷さん=川棚町

 -「石木ダム反対」を明確に打ち出しトップ当選した。ダムに対する町民の関心は高まったと言えるか。
 選挙結果で「ダムは要らない」という町民の民意が示されたと受け止めた。2016年に「石木ダム建設に反対する川棚町民の会」を結成。町内各地での学習会やビラ配りを通じ町民にダム問題について啓発してきたが、事業への疑問や反対意見を持っている町民は少なくなかった。
 石木ダムができると川棚町の水道水は今より水質が悪くなるのではないか。ダムに依存した治水は本当に安全なのか。こうした疑問や不信感が町民に存在する。一方で、町議会の反応は鈍く、学習会に顔を出す議員は少なかった。出馬を決意したのは、町民の声をしっかり示したかったからだ。

 -議員として、どのように活動していくのか。
 石木ダムは、人口規模も、経済状況も、環境への考え方も、今と全く異なる前時代の計画。時代に応じて町民の考えが変わっているのに、政治の世界だけが旧態依然としている。「民意」をしっかり訴えていくつもりだ。

 -そんな中、県収用委員会が地権者13世帯の宅地を含む用地の収用を裁決した。
 今更、地権者側の反感をあおるようなことをして何になるのだろう。求められているのは、法的な手続きではなく政治判断。県や佐世保市、川棚町には、今回の選挙結果が示した「民意」を甘く見ないでほしい。

◎田口一信氏(70)/説明不足、町にも責任

「町民の安全の問題は賛成、反対で論じる性質のものではない」と語る田口さん=川棚町

 -選挙戦ではダムの必要性を重点的に訴えた。
 「佐世保市の水需要が減少しているから石木ダムは要らない」という論調を見かけるが、仮に利水目的がなくなったとしても、川棚川流域の治水の課題は残る。県が行政の責任として流域の治水対策を検討した結果、石木ダムが最も合理的と判断した。そもそも町民の安全の問題は、賛成、反対で論じるような性質のものではない。こうしたことを町民に理解してもらう必要があった。

 -反対地権者のトップ当選をどう見たのか。
 予想以上の得票で驚いた。「大型公共事業は無駄」と考えるムードがあったのだろうか。私も選挙戦を通じて、石木ダムの必要性が十分に理解されていないと感じた。きちんと説明してこなかった町にも責任の一端はあると思う。

 -改選前には議会の石木ダム対策調査特別委の委員長を務めていた。ダムを巡る今後の町議会の動きは。
 特別委で反対地権者と対話をしたかったが、かなわなかった。地権者が議会に入ったことで状況が変わると期待している。特別委は6月の定例会で再び設置されると思うが、私は地権者の炭谷議員にも入ってもらいたい。徹底的に意見を言ってほしい。
 町は「事業主体は県と佐世保市」との立場で、この問題から逃げてきたが、地権者が議員になった以上はそうもいかない。同時に私は推進の立場から、これまで消極的だった町の姿勢をただしていくつもりだ。