スーパーバイク世界選手権(SBK)第9戦アメリカがウェザーテック・ラグナ・セカ レースウェイで行われ、レース2ではチャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が2019年シーズン初優勝を飾った。また、ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)がレース1、スーパーポール・レースで連勝。アルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)は3レースでノーポイントに終わる結果となった。
土曜日の午前中に行われたスーパーポールでは、ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)がポールポジションを獲得。2番手にチャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)、3番手にアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)がフロントロウに並んだ。
■レース1:序盤に転倒のバウティスタ。独走優勝を飾ったレイ
レース1は気温19度、路面温度41度のドライコンディションで行われた。ホールショットを奪ったのはポールポジションスタートのレイ。デイビス、バウティスタが続き、Aruba.it レーシング-ドゥカティのふたりはオープニングラップから2番手を奪い合うオーバーテイクを展開する。4番手はトプラク・ラズガットリオグル(ターキッシュ・プセッティレーシング)、5番手にはトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が続く。
レイ、デイビス、バウティスタの3人は3周目にして早くもトップ集団を築くと、4番手のラズガットリオグルに対し、差を1秒以上に広げる。デイビスが2周目に、さらに4周目にはバウティスタが1分22秒945のファステストをマーク。デイビス、バウティスタのタイムはこれまでのファステストラップレコードを更新するものだった。
5周目にはデイビスがレイにオーバーテイクを仕掛けるが、次のコーナーでレイがすぐにその座を奪い返す。そんなトップふたりの背後にぴたりとつけていた3番手のバウティスタだったが、5コーナーでフロントを切れ込ませてスリップダウン。砂煙を上げてマシンとともにグラベルに突っ込んだ。バウティスタはレースに復帰したものの、もはやトップ争いははるか前方へ遠ざかっていた。
トップ争いはレイとデイビスにしぼられ、このふたりにより接戦が繰り広げられる。その差は0.2秒以内。拮抗したラップタイムを刻みながら、周回を重ねていく。
レイとデイビスの差が少しずつ、しかし確実に開き始めたのは8周目を超えるころだ。レイはコンスタントにデイビスよりも0.2秒から0.3秒ほど速いラップタイムを叩き出すと、追いすがる2番手のデイビスを引き離していく。トップのレイは13周目を迎えるころ、デイビスに対し1秒のアドバンテージを築くことに成功した。
独走態勢に入ったレイはそのままトップを守り、ポール・トゥ・ウインを達成。今季8勝目を挙げた。2位のデイビスは第7戦イタリアのスーパーポール・レース以来の表彰台獲得。3位には6度目のポディウムを獲得し、めきめきと速さを示しているラズガットリオグルが入った。
序盤に転倒を喫したバウティスタは17位完走。バウティスタがレース中に転倒を喫したのは、2019年シーズン通算4度目だ。清成龍一(モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム)は16位でチェッカーを受けている。
■SBK第9戦アメリカ レース1順位結果(25周)
Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap
1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 35’06.671
2 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 5.693
3 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 12.721
4 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 14.957
5 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 20.621
6 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 23.087
7 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 26.491
8 76 L.バズ テンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1) 30.605
9 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 32.556
10 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 44.432
11 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 46.792
12 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 47.091
13 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 51.830
14 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 53.661
15 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 00.235
16 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 10.076
17 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 1 Lap
RET 95 J.D.ビーチ アタック・パフォーマンス・エステンソン・ヤマハ(ヤマハYZF-R1) 13 Laps(リタイア)
RET 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 22 Laps(リタイア)
■スーパーポール・レース:クラッシュにより赤旗中断。バウティスタは転倒により再開後のレースに出走せず
翌日、日曜日のスーパーポール・レースは気温18度、路面温度36度のドライコンディションのもと、行われた。好スタートを切り1コーナーにトップで飛び込んだのはデイビス。そのすぐ背後にはレイ、そして5番手スタートのレオン・ハスラム(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)がつける。
3番手スタートのバウティスタは、オープニングラップの2コーナーでクラッシュ。バウティスタの転倒は、2コーナーでインにポジションをとったバウティスタとそのアウト側のラインを走行したラズガットリオグルとが接触して起こったものだった。転倒後、バウティスタはしばらくグラベル上にうずくまったまま起き上がることができなかった。
さらに8コーナーでアレッサンドロ・デルビアンコ(アルティア・ミエ・レーシングチーム)とワイルドカード参戦のJ.D・ビーチ(アタック・パフォーマンス・エステンソン・ヤマハ)が激しく転倒。このクラッシュにより、コース上にマシンの破片が飛び散ったために赤旗が提示。レースは中断となった。ふたりのライダーは、起き上がって移動する様子が確認されている。
約20分の中断を経て、レースは残り周回数8周で再開。中断前のレースで転倒したバウティスタ、デルビアンコ、ビーチは、2度目のスターティンググリッドに着くことはなかった。ホールショットを奪ったのはレイで、2番手にデイビズ、3番手にサイクス、4番手にレオン・ハスラム(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)、5番手にラズガットリオグルが続く。
わずか8周の超スプリントレース。レイは序盤からハイペースの走りで、1周目を終えるころには早くもデイビスとのギャップを1秒近くに広げる。2周目、レイは1分22秒700という、ファステストラップレコードを塗り替えるタイムをマーク。単独トップを守る。
残り4周、その後方ではハスラムとラズガットリオグルにより激しい4番手争いが展開された。4番手のハスラムをテール・トゥ・ノーズで追うラズガットリオグル。そんなふたりに、6番手のアレックス・ロウズ(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)が迫る。残り3周で、ラズガットリオグルがついにハスラムをとらえ4番手に浮上した。
トップのレイは8周のレースで2番手以下に対し2.5秒以上のアドバンテージを築いてチェッカー。レース1に続く連勝を飾った。2位のデイビスもレース1同様に2位フィニッシュ。3位には今季3度目の表彰台獲得となるサイクスが入った。
4位はハスラムとのポジション争いを制したラズガットリオグル、5位はハスラム。再開後のレースに出走しなかったバウティスタはノーポイントに終わることになった。清成は15位フィニッシュを果たしている。
■SBK第9戦アメリカ スーパーポール・レース順位結果(8周)※赤旗中断から再開後
Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap
1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 11’09.272
2 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 2.533
3 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 3.641
4 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 4.901
5 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 5.995
6 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 6.207
7 76 L.バズ テンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1) 9.597
8 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 9.711
9 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 13.441
10 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 13.633
11 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 14.658
12 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 14.865
13 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 17.991
14 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 18.917
15 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 19.253
16 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 40.443
NS 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) スタートできず
NS 95 J.D.ビーチ アタック・パフォーマンス・エステンソン・ヤマハ(ヤマハYZF-R1) スタートできず
NS 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) スタートできず
■レース2:バウティスタ、序盤にリタイアを選択。デイビスが2019年シーズン初優勝
続くレース2のグリッドはスーパーポール・レースの結果によって、レイがポールポジション、2番グリッドにデイビス、3番グリッドにサイクスが並んだ。スーパーポール・レースの赤旗中断前に転倒を喫し、再開後のレースには出走しなかったバウティスタは、左肩の負傷を抱えながらもレース2のグリッドに着いた。
また、スーパーポール・レースの赤旗中断の原因となったクラッシュを起こしたデルビアンコは、このときの走行によって最後尾スタートとなっている。
レース2は気温15度、路面温度29度のドライコンディションで争われた。スタートの加速で先行したのはレイだったが、そこからデイビスがレイに並びかけると1コーナーに先頭で飛び込む。レイはデイビスにトップを奪われ、3番手にラズガットリオグルがつける。
3周目、バウティスタがスローダウン。バウティスタはそのままピットに戻り、レースを終了。本人のリアクションの様子から、スーパーポール・レースで負った怪我の影響だとみられる。バウティスタは第9戦アメリカのすべてのレースを、ノーポイントで終えることになった。
トップを走るデイビスは3周目にファステストをマークしてレイに先行。レイもデイビスを追うが、5周目の時点でその差にはやや開きがある状況だ。レイの約1秒後方には変わらずラズガットリオグルがつけるが、こちらもレイに追いつくには及ばない。
5周目、マイケル・ファン・デル・マーク(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)がピットイン。レース後の情報では、マシントラブルが発生したということだ。
レース折り返しの13周目を終え、トップは変わらずデイビス、その約2秒後方に2番手のレイ、さらに約3秒遅れて3番手のラズガットリオグルが続く。トップの3台はそれぞれ単独走行。さらに離れて4番手にサイクス、5番手にロウズ、6番手にハスラムの3台が1秒以内のワンパックとなって周回を重ねる。
デイビスはそのまま単独トップを守り切り、2019年シーズン初の優勝を飾った。デイビスにとって、2018年第3戦アラゴンのレース2以来となる勝利だった。2位はこの週末、2勝を挙げていたレイ。レース2ではデイビスの後塵を拝する結果となった。3位はラズガットリオグルで、2019年シーズン7度目の表彰台を獲得している。清成は15位フィニッシュでポイントを獲得した。
チャンピオンシップは、ランキングトップのレイが433ポイント、2番手のバウティスタが352ポイント。第8戦イギリスでついに逆転したレイとバウティスタのポイント差は、第9戦アメリカで早くも81ポイントにまで開く結果となった。
SBKは第9戦アメリカで前半戦を終え、サマーブレイクを挟んで9月6~8日、第10戦ポルトガルが行われる。
■SBK第9戦アメリカ レース2順位結果(25周)
Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap
1 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 35’05.513
2 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 3.333
3 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 11.658
4 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 16.259
5 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 16.823
6 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 19.449
7 76 L.バズ テンケイト・レーシング(ヤマハYZF-R1) 23.637
8 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 24.572
9 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 25.919
10 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 30.742
11 36 L.メルカド オレラック・レーシングVerdNatura(カワサキZX-10RR) 32.177
12 50 E.ラバティ チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 38.508
13 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 41.862
14 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 41.989
15 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 55.483
16 95 J.D.ビーチ アタック・パフォーマンス・エステンソン・ヤマハ(ヤマハYZF-R1) 1’00.385
17 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 1’12.973
RET 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 22 Laps(リタイア)
RET 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 24 Laps(リタイア)