令和の選択 参院選長崎終盤ルポ・2<大村市> 公開討論会 人まばら

空席が目立った公開討論会=大村市幸町、シーハットおおむら

 収容可能500人のホールは人もまばらだった。参院選公示直前の2日、大村市内であった自民現職、古賀友一郎氏(51)と国民民主新人、白川鮎美氏(39)による公開討論会。集まったのは主催者発表で100人弱。スマートフォンゲームに夢中になっている来場者の姿も。「ちょっとこれは寂しすぎるね」。来場した女性は苦笑いした。
 盛り上がりに欠く状況は公示後も変わらない。人口増加都市で、県央の要所でもある大村に国民民主は確たる拠点を持たず、地方議員もいない。集票活動の足場に欠いているのが現状だ。公示後、白川候補もほぼ素通り状態が続く。
 国民にとって、共闘する野党、とりわけ大村に県連本部を置く立憲民主の存在は大きい。「自民党は多くの組織を抱え、私たち(野党は)はまだ追いつけていない。この戦いで追い越そう」-。大村での白川候補の出陣式。立民の山田勝彦県連代表は力を込め、野党共闘で安倍1強体制を打破しようと気勢を上げた。だが、立民やほかの野党関係者らからは「軸足は比例区で自分の党の票を伸ばすこと」と本音も漏れる。
 一方、県議会会派の分裂で県連内に溝が生じている自民。自民大村支部が呼び掛けた古賀候補の7日の個人演説会には200人弱が集まり、満席状態だった。「席が埋まるか心配だった」。市議の一人は胸をなで下ろすが、予定していた会場の広さを縮小しての開催。地元に影響力を持ち、古賀候補とは距離を置く谷川弥一衆院議員の姿もなく、一枚岩とはなれない党内事情をうかがわせた。
 前回参院選では野党候補を推した無所属の小林克敏県議は一転、自身が所属する県議会会派「自民・県民会議」に近い古賀候補の応援に回る。7日の個人演説会について、自民・県民会議側は当初、一緒に開くよう自民大村支部側に持ち掛けたが、支部側は単独開催を主張。小林県議は古賀候補を招く県政報告会の開催を決め、自身の後援会400人超を集めた。支部が呼び掛けた個人演説会より盛況な会場に、自民・県民会議側の県議は不満を口にした。「向こう(支部)のグループはちゃんと動いているのか」
 新興住民層が増え続ける大村は、地縁などにとらわれない浮動票の割合が高いとされ、両陣営にとって、その取り込みが鍵だ。それだけに、投票率の行方に両陣営は気をもんでいる。前回参院選で57%台だった大村の投票率は、今春の県議選では51.53%、市議選で52.80%と落ち込んだ。
 自民県議の一人は「今回は大村で50%を切るのでは」と懸念。両陣営とも、無党派層と投票率の動向をつかみかねたままだ。

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