マニュアル車、すんなりとリバースギアに入れられる?
特定の車種が事故を起こすとSNSなどで「シフトの操作方法が特殊だから事故が起こる」という意見を目にすることがあるが、それはなにも2ペダル車に限った話ではない。70年代くらいまでの車両に存在していたコラムMTはメーカーによってギアの位置が異なり、手前の上が1速の車両もあれば、手前の下が1速の車両もあったのだ。
また、ツーリングカーなどのレースベースとして人気だった車種には「ローバック」と呼ばれるシフトパターンも存在していた。これはHパターンミッションのロー(1速)の位置にバック(後退)ギアが位置し、2速の位置が1速と位置がひとつずつズレて配置されているというもの。これは、レース中によく使う2速と3速のシフトチェンジを縦の動きにすることで、シフトスピードの向上やシフトミスの減少を狙ったものだった(今でもトラックなどでは使われているパターンでもある)。
と、このようにマニュアルでもシフトパターンに違いがあるワケで、これは最近のモデルにも当てはまる。それは後退するときに使用するリバースギア(バックギア)だ。
リバースギアに入れるための特別な“儀式”
一昔前は5速マニュアルが主流だったため、リバースギアは右下が定位置だった(それでも違う場所に位置する変わったクルマもあったが)。しかし、最近では燃費の向上などの理由もあって多段ギアとなる6速マニュアルが増えてきたため、リバースギアの位置が車種によって異なるようになってきたのである。
そもそも最近のクルマであれば走行中にはリバースギアに入らないように作られているため、シフトミスが起きることはないのだが、停車中であれば話は別。そのため、車種によっては特別な“儀式”をしないとリバースギアに入れることができないものもあるのである。
1:シフトノブのリングを引き上げるタイプ
スバル系などに多く採用されているのが、シフトノブの下に備わるリングを引き上げながらでないとリバースギアに入らないタイプだ。知っている人ならば戸惑うこともないだろうが、知らない人から見ると、リングがシフトノブの加飾に見えてしまい、まさかこれがロック解除のリングだとは気づかない人も少なくないようだ。
2:シフトノブを押し込んで入れるタイプ
最近のマツダ車などが採用しているのが、シフトノブ自体を押し込みながらリバースギアに入れるタイプ。これに関しては前述のリング式のように一見しただけでは分からないため、所見殺しのタイプと言えるだろう。逆に4速マニュアルだったクラシックミニはシフトノブを引き上げてリバースに入れるタイプであり(純正シフトノブには小さく「LIFT」と書かれていた)、同じ操作をするのに真逆の動作が必要となっていた。
3:実は何もしなくていいタイプ
いろいろなパターンがあるため、この車両はどういう風にリバースに入れるんだろう…? と散々悩ませておいて、実は力いっぱいリバース方向にシフトノブを倒すだけ、というのがホンダ系などに採用されているもの。
軽い操作では全くリバースに入る気配がないが、かなり力を込めて操作すると入るというもので、あまりの抵抗の強さに「別のアクションが必要に違いない」と思ってしまうが、それだけに走行中などにうっかりリバースに入ってしまうということは防げるというシンプルなものである。
何だコリャ、と思ったらトリセツを
ということで、実は車種によって大きく異なるシフト操作の方法。普段と違うクルマを乗るときは、固定概念を捨てて一旦取扱説明書に目を通すのが一番なのかもしれない。
[筆者:小鮒 康一]