【U-18W杯】日本、世界一へ求められる打線の奮起 得点力向上へ必要な“好球必打”

侍ジャパンU-18代表ナインと永田裕治監督【写真:荒川祐史】

野口寿浩氏がカナダ戦を分析、2番手・飯塚は「安心して見ていられた」

■日本 5-1 カナダ(5日・機張)

 韓国・機張(きじゃん)で行われている「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(全試合テレビ朝日系列・BS朝日・AbemaTVで放送)は5日にスーパーラウンド初戦が行われ、野球日本代表「侍ジャパン」高校代表はカナダに5-1で勝利。オープニングラウンドの成績と合わせ、米国、台湾、豪州と並ぶ2勝1敗とした。大会初登板初先発の奥川恭伸投手(星稜)が7回18奪三振無四球2安打1失点の快投で度肝を抜いたが、2番手の飯塚脩人投手(習志野)も2イニングを無安打無失点2奪三振と完璧なピッチング。一方で、打線は相手のミスに助けられて5点を奪ったが、ヒットはわずか3本に終わった。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、高校の後輩でもある飯塚の投球について「安心して見ていられた」と評価。一方で、打線については「打席での集中力」が課題になると説き、2試合連続で同じメンバーとなった内野の布陣についても「このままの形でいくべき」だとした。

 衝撃の“世界デビュー”を飾った奥川の後を継いで8回からマウンドに上がった飯塚は、4点リードという状況の中で安定感のある投球を見せた。2者連続見逃し三振でスタートを切ると、続く打者は二直で3者凡退。9回も遊ゴロ、一ゴロ、中飛に抑えた。内角低めへのボールで自己最速151キロもマーク。1日の米国戦では投げなかったフォークも効果的だった。

 米国戦の後には「飯塚は甲子園で投げていたときはスライダーよりフォークの方が良かった。でも、米国戦ではフォークは1球もなかったと思います。急造バッテリーというのもあるでしょうが、ピッチャーの生かし方は早くつかまないといけません」と配球面について厳しく指摘していた野口氏は、この日は「落ちる球を使って安心して見られた」と評価した。

 さらに、飯塚の直球の“質”も称賛。「目いっぱい投げていない感じでも151キロを出している。バッターからしたら嫌なものです。しかも、若干ですが腕が遅れて出てくるタイプなので、本当に打ちにくいと思います」。千葉大会や甲子園ではロングリリーフで幾度となくチームを救ってきたが、「習志野のときは試合の半分くらいを投げなくてはいけませんでしたが、侍ジャパンでは1、2イニングという役割になりそうです。この先もカギを握る選手になるでしょう」と野口氏。初の世界一に輝くために、今後もフル稼働が求められそうだ。

 また、守備面ではパナマ戦に続いて武岡龍世内野手(八戸学院光星)が遊撃を守り、熊田任洋内野手は指名打者で出場。さらに、登録メンバーに本職が少ない外野は、遊撃手の森敬斗内野手(桐蔭学園)が“不動”の中堅手として出場したものの、左翼には宮城大弥(興南)、右翼には西純矢(創志学園)と、投手としてプロから注目を浴びる2人が入った。

 遊撃で失策が出ていた熊田のDH起用、そして、投手の外野手起用を当初から勧めていた野口氏は、「雨が降っていなかったこともあり、守備はノーエラーでした。ようやく、守備の安定感が出ましたね。内野はこの布陣でいいのではないでしょうか。ピッチャー2人が投げないときは外野を守るというのも、チームとしては大きい」と分析。宮城や西は今後も投手としての起用もあるはずだが、内野については現在の布陣が最も安定していると見ている。

「しっかりタイミングを取って、打つべき球だけを打つという集中力が必要」

 一方で、5点を奪いながら3安打に終わった打撃については、野口氏はカナダ投手の攻略は簡単ではなかったとしながらも、打席での「集中力」を求めた。

「バントを使ってのチャンスの作り方は日本らしかったですが、あと1本が出なかった。バントミスの処理のエラー、ショートのエラーと、どれもカナダにもらった点でした。カナダの先発投手のように、140キロ中盤が出て四球を出すタイプは、いつストライクが来るか分からない。あれだけ荒れてしまうと打ちにくいので、打席での集中力にかかってきます。ボールっぽい球に手を出してポップフライ、ボテボテのゴロという場面が多かったですが、これは打ち方どうこうではなくて、ストライク、ボールを見極めるしかありません」

 チャンスでいかにボールをしっかりと見られるか。もちろん、打席で集中していない打者などいないだろうが、知らない投手だからこそ、“好球必打”が求められるというのだ。

「米国もまだ投手を隠していると聞きます。どんなタイプか知らない中で、球が速くて荒れ気味の投手の場合は、集中力を研ぎ澄まさないといけません。カナダ戦では四球を10個取った。これはシングルヒットを10本打ったのと同じことです。なので、あとは最後の仕上げの部分。打席の中でどう過ごせていけるか。得点圏まで走者を進めているので、外野の頭を越えていく打球を打たなければいけないわけではありませんが、だからといってコツンコツンと当てにいくばかりでも良くない。しっかりタイミングを取って、打つべき球だけを打つという集中力が必要です」

 多士済々の投手陣がいるだけに、あとは打線が点を取れるか。世界一へのカギははっきりとしている。6日は、日本戦で目の色を変えてくる韓国戦。相手は5日の台湾戦に敗れて決勝進出へ崖っぷちに立たされているだけに、必死で勝利を目指してくるはずだ。野口氏は「韓国の選手の気迫は凄いでしょうし、球場の雰囲気も異様になるでしょう。技術のある選手ばかりなので、強い気持ちを持って臨んでもらいたいです」と期待を寄せる。課題を1つ1つクリアして、世界一への階段を上がっていきたいところだ。(Full-Count編集部)

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