「強くなって帰ってくる」―TJ手術、戦力外、育成契約も…オリ右腕が前向きな理由

オリックス・黒木優太【写真:橋本健吾】

オリックス黒木はトミー・ジョン手術を経て軽いスローイング再開「落ち込むことはない」

 150キロを超えるストレート、スライダー、フォークなどを武器に2017年にはオールスターに出場した剛腕は球団施設で軽いキャッチボールをスタートさせた。6月後半にトミー・ジョン手術を受け今オフに一度、戦力外通告、そして育成契約となったオリックスの黒木優太はどこまでもポジティブだった。

「不安何てこれっぽっちもなかったですよ。手術をしないと投げられないわけですから。これで良くなると思っていますし。背番号も3桁になりましたが落ち込むことはなかったです」

 球団施設ではショートダッシュ、トレーニングボール、ネットを相手に軽いスローイングを行う。終始笑顔で「正直、今はまだ3割程度。まだまだです」と語り、淡々とトレーニングをこなす毎日を送っている。

 来季は育成契約になるのを知ったのは報道が先だった。球団からの事前通達を前にネット、新聞などでシーズン中に自身の契約内容を知ることになった。

「もう手術した時点で何となく分かっていましたけど。『あ、そうなんだ』と。そのあとにGM(福良)からも話があったので自分のことを必要としてくてるって感じました」

新聞で自身の育成契約を知り「あ、そうなんだ」 福良GMはすぐさま本人の元へ

 先行報道は福良GMも寝耳に水だった。当時、GMは1軍のチームに帯同しソフトバンクとのナイター戦後にそれを知った。翌日はホームでの移動ゲーム。京セラドームではなく一目散に向かったのは黒木らがリハビリを行う球団施設だった。

「選手たちはやっぱり不安に思う。朝起きて新聞を見て育成契約って知ったら本人はどう思うか。手術をして一番苦しいリハビリの途中でモチベーションなんて誰も上がらない。本人たちには『悪かった』と謝りました。ちゃんと説明して焦らず治してくれと」

 黒木にもその時の言葉は胸に残っている。当時を振り返りこう答えた。

「自分の性格とかも知っているので『お前は焦ってしまうから、焦ったらダメだぞって。ゆっくり直せ』と。早く投げたい気持ちはありますがもう一度、同じことをやってしまったら意味がないので」

 トミー・ジョンを受けた“仲間たち”からも情報収集は欠かせない。阪神から移籍してきた竹安はプロ入り前に同じ手術を経験、左腕の山田は2014年にメスを入れ、比嘉、東明らもトミー・ジョンではないが大きな怪我を克服し全員が再び1軍の舞台に帰ってきている。

「周りに色々経験した方もいるので、それも少しは支えになっている部分もあります。もう一回、1軍で以前よりもっと強くなってマウンドに戻る。その自信しかないですし、もう前を向くしかないですよ」

 完全復活までの道のりはまだ果てしなく遠い。キャッチボールの強度を上げ、遠投、ブルペン、実戦復帰、支配下登録…。「今の目標はとりあえず早く全力で投げることですかね。まずそこからです」。最後まで笑顔は絶やさない。チームそしてファンは黒木が京セラドームのマウンドに帰ってくるのを待っている。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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