新幹線長崎ルート アセス費見送り 長崎県内反応 落胆や国への注文

 2020年度予算案で、国土交通省が九州新幹線長崎ルートの新鳥栖-武雄温泉(佐賀県)の着工に先立つ環境影響評価(アセスメント)費の計上を見送ったことに、全線フル規格での同ルート整備を求めている長崎県や県内の沿線自治体、経済団体などからは18日、落胆や国への注文が聞かれた。
 県は本年度アセスが始まった北陸新幹線・敦賀-新大阪に着工時期が遅れないよう20年度予算案への計上を求めていた。
 中村法道知事は県庁で報道陣の取材に「大変残念に思っている」としつつ、新鳥栖-武雄温泉の整備方針を巡る佐賀県と国交省との事務レベル協議に「大きな前進と期待している。一刻も早く協議・調整が進み、アセスに着手できるようさらなる努力をお願いしたい」と求めた。その上で、20年度途中のアセス費予算化に向け「(長崎県も)最善の努力をしなければならない」と語った。
 県議会の九州新幹線西九州(長崎)ルート・交通対策特別委員会の八江利春委員長も「正直ショックだが、(今後)20年度予算にアセス費を計上してほしい」と期待を寄せた。
 沿線自治体の首長も、事務レベル協議の行方を注視する。長崎市の田上富久市長は「非常に残念」としつつ、与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)がフル規格が適当との方針を示し、佐賀県も含めた協議が維持されるとして、「できるだけ早い時期にしっかり議論を重ねてフル規格の方向に進むよう市としても努力したい」とした。
 大村市の園田裕史市長も「非常に残念だが粘り強くやるしかない。アセス費の計上が先送りになったとしてもできる限り最短を目指してほしい」と国に注文。諫早市の宮本明雄市長は「現状ではやむを得ない。国、佐賀県、長崎県、JR九州の4者協議が進展し、早期に全線フル規格整備に係る佐賀県の理解が得られることを期待している」とのコメントを出した。
 長崎経済同友会の坂井俊之代表幹事は「佐賀県の経済界にも全線フルのメリットを理解している人がいるが、山口祥義知事を説得できる状況にないそうだ。早く話が進んでほしいが、今は見守るしかない」と述べた。
 一方、JR九州は「国交省と佐賀県との間で協議の開催に向けた調整がなされていくと思うので状況を注視したい」とした。

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