わがまち回顧 東彼支局 ダム問題タブー視 変化

13世帯の宅地を含む全用地が土地収用法に基づき収用された石木ダムの水没予定地。重大局面に入り、町民の動きも活発になった=東彼川棚町岩屋郷

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム問題は今年、反対住民13世帯の宅地を含む約12万平方メートルが土地収用法に基づいて収用された。町が事業主体でないことや町民にも賛否両論あることから、地元ではダムに関する議論がタブー視される傾向にあったが、重大局面に入り、状況が変化しつつある。
 4月の町議選では、反対地権者の炭谷猛氏(69)が最多得票で初当選した。地縁、血縁の影響が大きい選挙戦で、正面から「ダム反対」を訴えた新人のトップ当選は、県側の強権的な手法に違和感を示す町民が少なからずいることを示した。
 炭谷氏の当選を受け、土地の強制収用に反対する議員連盟の設立など新たな動きも生まれた。一方で推進派議員も10月に地元で意見交換会を開き、久々に動いた。だがダムの必要性を議論したい反対派と建設を前提に住民を説得したい推進派では、望む「対話」の形に大きな隔たりがある。
 全国で大規模な豪雨、台風被害が相次ぎ、川棚川の治水が喫緊の課題であることは確かだ。だが行政代執行をも辞さない県側の姿勢に、地元の理解は進んだどころか、さらに疑念を深くしたと言わざるを得ない。

◎主なニュース

 ▼東彼杵町立彼杵、千綿両中が統合し、東彼杵中が開校▼東彼杵町長選で岡田伊一郎氏が初当選▼県内初の抹茶原料工場が東彼杵町にオープン▼県立川棚高女子ホッケー部が国体九州大会で優勝▼波佐見町でクラフト・ツーリズム協議会が発足▼全国茶品評会蒸し製玉緑茶部門で東彼杵町が3年連続の産地賞▼波佐見町の「朝飯会」が200回

© 株式会社長崎新聞社