朝鮮通信使 饗応を再現 対馬の郷土料理を学ぶ会 杉焼、くわすり…など9品

朝鮮通信使の饗応料理について解説する対馬市文化交流・自然共生課の町田主幹(写真右奥)と、饗応料理を再現した「対馬の郷土料理を学ぶ会」のメンバー(同左奥)=同市美津島町、美津島文化会館

 江戸時代の「朝鮮通信使」に対馬藩などが振る舞ったおもてなし料理の粋を、豪華な一膳にまとめた「朝鮮通信使饗応(きょうおう)料理再現御膳」が26日、対馬市内の公民館でお披露目された。観光関係者ら約20人が試食し、往事の宴に思いをはせた。

 御膳を作ったのは、地元の伝統食を後世に残そうと2017年に結成した市民有志の料理研究グループ「対馬の郷土料理を学ぶ会」(12人)。同会は、島内各地でお年寄りに聞き取りするなどして、これまでに約70種類の郷土料理を作り、レシピを記録している。
 朝鮮通信使は朝鮮王朝の国書を携えて漢陽(現在のソウル)から江戸などを目指して往来した外交使節団。対馬藩は、海を渡ってたどりついた一団を手厚くもてなしたとされる。
 同会の山川房子会長(71)らは、歴史書や学芸員の講演録などから饗応料理に使う食材について学んだ。一部は現代人に合うよう改良し、9品を作り上げた。
 このうち、スギ製の器でタイなどを煮て移り香を楽しんだとされる「杉焼(すぎやき)」は、煮しめた対馬産アワビやシイタケなどを甘辛いみそに付けて食べるようアレンジ。スギ製の器が無かったため、移り香はあぶったスギの葉を添えた。
 ほかにも、ごま油で揚げた小麦粉生地をハチミツ焼酎に漬けて味わう朝鮮由来の菓子「くわすり」なども出された。
 山口県下関市で饗応料理の再現に取り組んだことのある対馬市文化交流・自然共生課主幹の町田一仁さん(64)は「味付けに工夫を感じた。名物料理の一つとして島内外に紹介できるのでは」と感想を述べた。山川会長は「このレシピも、対馬のために役立てることができればうれしい」と話した。

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