行政書士試験の足切り制度とは?理想的な点の取り方と勉強の優先順位

国立大学の入学試験でよく聞かれる「足切り制度」。行政書士試験でも足切り制度が導入されています。当記事では、行政書士試験に足切り制度が導入されている理由と、足切り基準点を解説します。そして、足切りされずに行政書士試験に合格するための勉強法をご紹介します。

足切り制度とは?行政書士試験で足切りする理由

聞いたことはあるけれど、うまく説明できないという方も多い「足切り制度」。主に国立大学入試で行われる合否判定制度ですが、なぜ行政書士試験で足切り制度が導入されているのでしょうか。

足切り制度~合格者を絞り込む「門前払い」の採点方式

足切り制度とは、試験で一定基準に満たない受験生を切り捨てる制度です。あらかじめ合否判定基準を設定し、勉強不足の受験生を合格対象から段階的に外していく、いわゆる合格者を絞り込むための門前払いの採点方式をいいます。

行政書士試験に足切り制度がある理由

大学入試で足切り制度が導入される理由は、特定の国立大学を受験する生徒数を減らすことで、受験会場を確保し、採点労力を削減するためです。

行政書士試験の足切り制度が行われる理由も「採点労力を削減するため」と考えられています。

行政書士試験の合格率は過去10年間の合格率平均が10.29%と低く、その理由の1つに受験資格に制限がないため勉強不足で記念受験をする人がいることが挙げられています。そのため、勉強不足の受験者を合格対象から外し、採点者の労力を減らす対策として足切り基準が設けられていると考えられているのです。

行政書士の難易度について、下記参考で詳しく説明していますのでご覧ください。

参考

行政書士の難易度や合格率は?キャリアアップにつながる資格24選

行政書士試験の足切りの基準点

行政書士試験の足切り基準点は、行政書士試験研究センターで次のとおりに定めています。

次の要件のいずれも満たした者を合格とする。

(1)行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上である者

(2)行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上である者

(3)試験全体の得点が、180点以上である者

(引用元:平成30年度行政書士試験合否判定基準|一般財団法人行政書士試験研究センター)

具体的な行政書士試験の配点の仕組みとともに、足切り基準点について解説します。

行政書士試験内配点と足切り基準点のまとめ

行政書士試験内容と配点、足切り基準点についてまとめたのが次の表です。

科目	マークシート式	記述式(1問20点)	配点	足切り基準点
5肢択一式

(1問4点)

(1問8点、空欄1つ2点)

(20点)

(8点)

(36点)

(40点)

(20点)

(8点)

(12点)

(12点)

(12点)

(8点)

(20点)

(8点)

(12点)

(20点)

(160点)

(24点)

(60点)

(28点)

(16点)

(12点)

(56点)

参考

平成30年度行政書士試験合否判定基準|一般財団法人行政書士試験研究センター

行政書士試験 資格・試験ガイド|伊藤塾

行政書士試験に合格するためには最低でも全体で180点(基準点(3))を取らねばなりません。そのうち一般知識等科目で24点以上(基準点(2))が必要なことから、法令等科目では156点以上を取らねば合格できません。

また、一般知識等科目で56点満点取れた場合、合格最低点180点(基準点(3))を取るためには、法令等科目で124点以上取らないと合格しません。

つまり、合格するための基準点(2)と(3)を満たすには法令等科目で最低でも124~156点が必要だと分かります。

しかし、行政書士試験研究センターの足切り基準点(1)では「法令等科目で122点以上」と定めています。なぜ法令等科目の足切り基準点が124点ではなく、122点なのでしょうか。

これは、法令等科目の多肢選択式設問が空欄1つ2点で、5肢択一式設問が1問4点の配点がなされていることによる「配点のずれ」により起こるものです。細かくいえば、多肢選択式設問の正答数が偶数である場合は、法令等科目で124点以上が必要になります。一方で、多肢選択式設問の正答数が奇数である場合は、法令等科目で122点以上という足切り基準点ぴったりの得点が可能になるのです。

法令等に足切りがある意味~記述式問題の採点をするかを判断

前述の見出しで示した表のとおり、行政書士試験はマークシートで答える設問と記述式で答える設問が出されます。そして、マークシート式は機械で採点し、記述式は採点者が採点することになります。

このとき、機械が採点するマークシート式設問の得点が一定基準を満たしていない受験者を記述式の採点対象から外し、採点者の労力を減らすために足切り基準を設けているといわれています。

行政書士試験の合否通知書の点数欄に「**(アスタリスク)」がある場合、足切り基準点に満たなかったため採点がなされなかったということが分かります。

【理想的な点数の取り方】本試験分析から読み解く

行政書士試験は絶対評価ですので、一定基準点以上を取れば合格です。しかも、一定の合格者数が確保できなかった場合に合格基準点を引き下げる、という補正的措置が取られた過去を踏まえると、受験者の多くが解けないような超難問がたくさん出されるとは考えにくいでしょう。

世の中の試験すべてにいえることですが、合格するためには「ほかの受験者が落とす問題は取れなくて良い」のです。大切なことは、「皆が落とさない基本的問題を確実に取ること」だと意識しましょう。

資格取得と就職をサポートする専門学校「資格の大原」が公表している2019年行政書士試験の分析速報から、マークシート式問題の平均正答数を算定し、理想的な点数の取り方をまとめてみました。

科目	マークシート式	配点
5肢択一式

(1問4点)

(1問8点、空欄1つ2点)

(注)2017~2019年度の平均正解数を算定し、小数点以下を繰り上げて合格正解数を算定しています。

参考

2019年行政書士試験 本試験分析 速報|資格の大原

つまり、基本的問題を確実に正答するだけで、足切り基準点(1)と(2)をクリアできることが分かります。最後に、記述式問題で14点以上確保すれば足切り基準点(3)をクリアでき、行政書士試験で合格を勝ち取れるのです。

【優先順位科目】バランスよく勉強して足切り回避

行政書士試験で3つの足切り基準点をクリアし合格するためには、試験科目の配点を考えてバランスよく勉強することが大切です。仕事や学校で取り扱ったことがあるなどの理由で、個人的に得意な科目もあることでしょう。しかし、得意であっても配点の低い科目の場合は点数が伸び悩んでしまい、結局試験に合格することがかないません。

そこで、行政書士試験を無事に合格するためには科目に優先順位をつけて学習を進めましょう。なお、行政書士試験を独学で勉強されたい方は、下記参考に行政書士試験のために準備するものや学習スケジュールの立て方が掲載されていますので、ご覧ください。

参考

行政書士に独学で受かる方法!「計画」と「強い意志」が合格の鍵

まず行政書士試験の勉強を始める前に、次の2冊を購入するのがおすすめです。

【六法全書】

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【法律の基礎知識が学べる参考書】

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行政書士は行政手続きの専門家ですので、業務を行う上で六法全書は必須です。しかし、六法全書は法律書ですので、文言が簡潔で、解釈の仕方が難しいという特徴があります。そのため、法律書に触れたことのない方は、まず法律書を読む技術を簡単に身につけておくとスムーズに行政書士の勉強を開始することができます。

優先順位1位:法令等科目「行政法」「民法」

まずマークシート式で最も点数を取りたい「行政法」を勉強しましょう。行政書士の試験対策に専門学校へ通う場合は、学校で購入するテキストで構いません。専門学校に通わずに独学で勉強する場合は、行政書士の試験範囲が網羅されている総合テキストではなく、科目ごとの専門書を1冊ずつ購入し読み込むのがおすすめです。そこで、おすすめなのは次の参考書です。

【おすすめの行政法の参考書】

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「よくわかる」シリーズは具体的な設例を通して法律を解説しており、重要ポイントが理解しやすいように2色刷りしてあるのがおすすめポイントです。

行政法を理解したら、次は行政書士試験の中で配点が高い「民法」に取り組みましょう。民法はマークシート式だけでなく記述式でも得点を稼ぎたい科目です。

記述式問題を正答するために必要なのは、問題文の分析と、どの条文が問題解決に対応できるかという知識の呼び起こし作業です。これは実際の業務でも求められる対応力に直結しますので、起こりうる現実問題を想定して勉強すると良いでしょう。

【おすすめの民法の参考書】

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優先順位2位:法令等科目「憲法」

続いて学ぶのは、マークシート式で高得点が取りやすい「憲法」です。憲法はほかの法律に比べて条文が少ない上、行政書士試験では記述式が出ないという特徴があります。そのため、重要条文と判例知識をしっかりと記憶することが高得点への鍵となります。

【おすすめの憲法の参考書】

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優先順位3位:一般知識等科目「文章理解」

試験問題の配点が高い法令等科目ばかりに目がいきがちですが、一般知識等科目も足切り基準点があることを忘れてはいけません。

文章理解は読解力を問う問題です。ゆえに、日頃から新聞やニュースに目を通しておけば対策不要です。ただし、まったく新聞やニュースを読まないという方は意識的に社会に目を向ける必要があります。

全問正解者も多数出る文章理解。全問正解できるように毎日の積み重ねを大切にしましょう。

優先順位4位:一般知識等科目「情報通信・個人情報保護」

情報通信はIT用語の問題を落とさない、個人情報保護は出題範囲が決まっているため条文を読み込む、という対策をとりましょう。どちらも勉強した分、得点が取れる範囲です。

対策としては、テキストを購入するのではなく、下記サイトで知識を増やす勉強を行うのがおすすめです。

参考

国民のための情報セキュリティサイト 用語辞典|総務省

個人情報の保護に関する法律|電子政府の総合窓口e-Gov

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律|電子政府の総合窓口e-Gov

優先順位5位:法令等科目「商法」「会社法」

行政書士試験で配点が低い「商法」「会社法」は、多くの行政書士試験合格者が「捨て科目」と話しています。そのため、「行政書士試験にとりあえず合格する」ことだけを目的としている場合は後回しにし、本番までに時間的に余裕がある場合だけ勉強しましょう。

しかし、試験科目ということは、実務で必要だということです。まったくの勉強不足では自分が行政書士として看板を背負い仕事をする上で困るのは当然です。

マークシート式で足切り基準点(3)を確実にクリアしたい方は、勉強しておくことをおすすめします。

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優先順位6位:法令等科目「基礎法学」

「基礎法学」はほかの法令等科目(行政法・民法・憲法)や、一般知識等科目を学ぶうちに自然と解けるようになるため、特段勉強はしないというのが行政書士試験合格者の意見です。

優先順位最下位:一般知識等科目「政治・経済・社会」

一般知識等科目の「政治・経済・社会」の分野は試験範囲が広すぎて、試験に出る内容が予測不能です。つまり、勉強したからといって点数を稼げる科目ではないため、日頃から新聞を読んで時事対策をしておく程度で良いでしょう。

【試験対策】おすすめなのは過去問演習

勉強で行政書士の知識が身についたら、過去問演習を繰り返しましょう。行政書士試験は例年11月第2日曜日に行われますので、9~10月の2ヶ月かけて過去問演習を行うのがおすすめです。

【おすすめの法令等科目の過去問題集】

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【おすすめの一般知識等科目の過去問題集】

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過去問演習と同時に行いたいのが、判例集の読み込みです。判例集とは、実際のトラブルに対して裁判所が出した判決例文をまとめた本です。判例集を読むことは、裁判所の条文解釈を理解する上でとても良い練習になります。そのため、法令等科目の条文の大筋が頭に入った状態で読むと、法律に対する理解を深めるのに役立ちます。

【判例集】

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まとめ

行政書士試験はほかの法律系資格の登竜門ともいわれます。試験自体の難易度は比較的高くないものの、毎年合格率は低く、簡単に挑戦できる資格ではありません。行政書士試験の足切り3基準対策を練り、合格を勝ち取られることをお祈りしています。

参考

行政書士試験の「足切り」って何? 合格のために欠かせない勉強のコツとは(2019.4.24)|スタディウォーカー

<平成29年度版> 一般知識の足切り対策|ステップアップファースト

足切りを回避するために絶対にやるべきおすすめの勉強(文章理解・情報通信・個人情報保護)|行政書士試験独学178点不合格からのリベンジ!

【行政書士試験 法令・一般知識】勉強の優先順位 効率よく合格レベルに達するためには、どの科目を優先して勉強すればいい?(2019.2.17)|行政書士試験独学178点不合格からのリベンジ!

行政書士試験の一般知識で足切りにあわない方法(2019.9.21)|行政書士福岡法務

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