ランタンフェス不調

 その日はあまり寒くなかったこともあり、長崎市の孔子廟(びょう)の石畳に1時間余り座って「ショー」が始まるのを待った。長崎ランタンフェスティバルの期間中の休日、間近で見た変面に、すっかり目を奪われていた▲新型コロナウイルスの感染拡大で、中国からの出演は取りやめになったという。日本人だけの変面ショーでも存分に楽しめたが、いくらか寂しい▲「見る側」にも中国人とおぼしい人は見当たらなかった。ランタンフェスは、会場の華やかさといい、古式ゆかしい中国ちょうちんといい、伝統的な「中国らしさ」に中国人までも目を丸くするというが、今年はその姿もまばらだったらしい▲100万人を目指していた今年のランタンフェスの人出は、56万人ほどにとどまった。クルーズ船の入港が相次いで中止され、国内からも人が集まらなかったためだという▲肩を落としながら、前に聞いた話をふと思い出す。1980年代、新地中華街のイベントに旧正月を祝う春節祭を取り入れ、ビニール製のランタンをほんの300個ほど飾ったのがランタンフェスのルーツだ、と▲最初に明かりをともした人たちは「100年続く祭りに」と誓ったと聞く。今はウイルス騒動に天を仰ぐほかないが、ぐんぐん育ったこのイベントにはまだ先がある。前を向くのを忘れまい。(徹)

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