23日告示された対馬市長選は、比田勝尚喜候補(65)と荒巻靖彦候補(55)による現職、新人の対決の構図となった。「国境の島」が日韓関係の冷え込みや若者の流出、高齢化などに直面する中、両候補は振興策などを訴え、3月1日の投票日に向けて熱い舌戦がスタートした。
同市の人口は約3万人と、2005年の国勢調査時点と比べ約8千人減少し、人口減に歯止めがかからない。韓国から海路で来島した韓国人観光客は18年に過去最多の約41万人を数えたが、日韓関係悪化で昨年は約26万人にまで激減、島内経済に影響を及ぼしている。
第一声で比田勝候補は「今後は国内客の誘致と併せ、その他のインバウンドへも力を注いでいく」と強調。誘客先の多角化で交流人口増加を目指し、島内経済を活性化させたいとした。
一方、荒巻候補は、高レベル放射性廃棄物の地層処分施設誘致で観光依存の経済からの脱却を主張。街頭演説では「最初の6年間の調査時点でも、電源3法交付金が受け取れる」と訴えた。
再選を目指し、続投への支持を呼び掛ける比田勝候補と、大阪府門真市からゆかりのない対馬の市長選に出馬し、独自の政策を掲げる荒巻候補。子ども2人のうち小学生の末っ子が一昨年、“1人だけの入学式”を経験した豊玉町の主婦(42)は「島内は広いのに、産婦人科は車で40分離れた1カ所にしかない。少子化を止めるには、子育て世代が安心感を持てる取り組みが必要」と注文する。高齢化率が46.2%(1月末時点)と島内で最も高い峰町に暮らす自営業男性(69)は「周りは老老介護の世帯も多い。島の将来についての議論が聞きたい」と話した。
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