中日に松坂が残した“財産” キャンプグッズ売上2年連続1億円超に「松坂のおかげ」

北谷球場のグッズ売り場で商品を薦める北野勝則さん【写真:小西亮】

担当者の北野さんもご満悦「2年間在籍した松坂のおかげです」

 中日の1軍キャンプが行われている沖縄・北谷球場で、ひときわ賑わっているスポットがある。球場正面近くにあるグッズ売り場。ここでしか買えない限定品ばかりで、沖縄の特産品とコラボした商品も。昨年は背番号18になった松坂大輔投手の人気で売り上げが初めて1億円を突破したが、平成の怪物が去った今年も昨年並みの1億円超に。球団担当者は、松坂が残した“財産”だと感謝している。

 ファンの波は終日絶えることなく、次々と商品を手にとっていく。購入額が1万円以上になる客も少なくない。ハイビスカスをあしらった限定ユニホームなど約40種類にもおよぶグッズの数々は、ネットでも買えない商品ばかり。キャンプ終盤の24日、売り上げは2年連続で1億円を突破した。「2年間在籍した松坂のおかげです」。球団のグッズ担当・北野勝則さんは、そう噛みしめる。

 長身左腕として中日で1990年から9年間プレーした北野さんは、本格的にグッズ販売に携わって4年目。当初のキャンプ期間中のグッズ売り上げは2500万円程度で、テント1張の販売スペースで十分事足りていた。それが一変したのが2018年。松坂の加入で、北谷球場には人が溢れかえった。売り上げは一気に5000万円と倍増した。

 翌19年は、松坂が代名詞の背番号18に変更。「松坂の歴代の背番号18を集めている『18番コレクター』の方も多く来ていただいていました」と北野さん。ドラフト1位で根尾昂内野手が入団したことも話題になったことを受け、販売スペースを2倍にして対応。キャンプ初日だけで1000万円を突破し、期間中で初めて大台の1億円に届いた。

連日賑わいを見せている北谷球場のグッズ売り場【写真:小西亮】

松坂退団で売上の減少を覚悟するも…好調さに目を付けた6社とコラボし商品開発

 ホクホクの2年間だったが、19年限りで松坂が退団して西武へ。北野さんは「売り上げが落ち込むんじゃないかと不安だった」と言うが、松坂が残した“効果”は大きかった。中日グッズの好調ぶりに目をつけた沖縄の企業から新たにコラボの提案があり、6社と商品開発。親会社の中日新聞社が窓口となって協力し、昨夏から打ち合わせを繰り返してきた。ちんすこうや、芋けんぴの「紅いもカリカリ」などお馴染みの商品とタイアップし、売れ筋のひとつになった。

 さらに、売り場が戦場のような忙しさだった「松坂フィーバー」によって、球団職員らの経験値も飛躍的に向上したという。欠品を出して売り逃がしをしないように、在庫置場としてコンテナを新たに設置。売り手の手際も良く、キャンプ初日は昨年を上回る1300万円を記録した。他球団のグッズ担当からも「またすごいことやっていますね」と注目されているといい、北野さんは「売り上げはトップクラスのはずです」と胸を張る。

 絶好調の1か月は最終盤。視線はすでに来季に向いている。カレンダーを見ると、21年の2月1日は月曜日。「逆に言えば、1月30、31日の週末からきてもらえるチャンス」と北野さん。そのころは、北谷ではキャンプインを控えた選手たちが選手会合同自主トレをおこなっているタイミングで「自主トレグッズなんかを作っても面白いかもしれない」と目を輝かせる。7年連続Bクラスからの脱却を目指すチームの躍進は、まずはグッズ販売から始まっている。(小西亮 / Ryo Konishi)

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