WEC:アストンマーティンもGTE Proの将来を危惧。低コストの“LMDh”登場で「挑戦になる」

 アストンマーティン・レーシングのデイビッド・キング社長は、2021/2022年シーズンからWEC世界耐久選手権のトップクラスにLMDhプラットフォームが加わることで、GTE Proクラスの将来は「挑戦的なものになる」と語った。

 1月末に発表されたACOフランス西部自動車クラブとIMSAの新しいプラットフォームは、すでにいくつかのGTEメーカーから大きな関心を集めており、早ければ2021年のローンチまでにワークスプログラムを最高峰クラスへと移行させる可能性がある。

 現在、GTE Proクラスに参戦しているポルシェとフェラーリがLMDhの評価を行っている一方で、アストンマーティンは2020/21年からの参入を予定していたLMHル・マン・ハイパーカープログラムの延期を発表。長期的なスポーツカーの将来に疑問を投げかけている。

 2005年にワークスプログラムを復活させて以来、GTレースの中心となってきたイギリスのマニュファクチャラーは現在のところ、2021/22年シーズンまでプロドライブ社が運営するファクトリーチームでの活動が続くことを確認している。

 キングは先週末、サーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催され、GTE ProとGTE Amの両クラスでアストンマーティン・バンテージAMRが勝利を収めたローン・スター・ル・マンに集まったメディアの前に立つと、LMDhの費用対効果の高さが最終的にメーカーが争うGTEレースの終焉につながる可能性があることを認めた。

「もし、GTEプログラムと同じコストでLMDhを走らせ、レースの総合優勝を狙えるチャンスがあるならば、明らかにLMDhへの移行(を考える機会)があると思う」

「GTEにどのような影響があるだろうか? (実際にどうなるかは)分からない。その場合はAmクラスとして強化されること願うが、Proクラスにとっては難しい挑戦になると思う」

 このように語ったキングは他のすべてのメーカーと同様に、3月のWECセブリング1000マイル/IMSAセブリング12時間のイベント中に予定されているLMDhの技術詳細の発表を待っているが、LMHの延期を決定したアストンマーティンもLMDhの評価を行うことを認めた。

 また、キングはGT3が最終的にACOが運営するレースにおいて、GTEに取って代わるものになるかという質問に対して、彼らは「踏み入れるつもりはない」と自身の推測を述べている。

「現時点で、その話題はかなり政治的な問題だ」

「いま、私たちは今シーズンのGTEプログラムと、チャンピオンシップ獲得のチャンスに集中したい」

「私たちにとって好ましいのは、GT3カーがGTEマシンに非常に似ていることだ。(現行のバンテージは)ほとんどの部分で互換性があり、交換可能になっている」

■GTレースへの参加継続を改めて表明

 アストンマーティン・レーシングのボスは先週末、GTレーシングに対するイギリスメーカーのコミットメントを再確認するとともに、WECへの長年の参加にも言及した。

「バンテージはレースカーだ」と語ったキングは、「GT4、GT3、GTEで成功を収めてきた。我々はこの活動に全力を尽くしている」と続けた。

「2005年にレースへ復帰して以来、私たちはずっとル・マンに居る。WECにも欠かさず参戦し続け、会社とこのスポーツにとって厳しい時期を何度も乗り越えてきた」

「我々はいつもこのパドックいる。それが認識されることを願っているよ」

アストンマーティン・レーシングはGTE Proクラスに2台、GTE Amクラスに1台のバンテージAMRを投入している。
アストンマーティン・バンテージはGT3とGTEでその多くの部分を共有しており、仕様変更が可能となっている。

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