ホンダF1山本MDインタビュー(2):新車発表会で「マーケティングの重要さを痛感」2021年以降の参戦は?

 2020年シーズン、ホンダF1はアストンマーティン・レッドブル・レーシングと組んで2年目のシーズンを迎える。スクーデリア・アルファタウリとは、前身のトロロッソ時代を含めると今年が3年目だ。

 今年は、2月に発表されたレッドブルの新型マシン『RB16』とアルファタウリの新車『AT01』に掲載されたホンダのロゴにも大きな変化があった。また、ホンダの育成ドライバーについても動きがあった。

 今回はホンダF1の山本雅史マネージングディレクターに、マシンに掲載されたホンダのロゴや育成ドライバーについて、さらには2021年以降の活動についても話を聞いた。

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──今年はトロロッソがチーム名をアルファタウリに変え、マシンのカラーリングが変わり、白と濃紺のモノトーンになりました。その中で、ホンダのロゴだけが、真っ赤で目立っていますね。

山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):ホンダから『赤にしてほしい』とお願いしました。すぐにOKしてくれませんでしたが、最後はフランツ(トスト/アルファタウリのチーム代表)と話し合って決まりました。フランツもチャームポイントになっていて、いいねと。見え方によっては、日の丸っぽいですし。

──レッドブルの方のホンダのロゴも大きくなりました。

山本MD:あれは、そんなに突き詰めた話はしていません。(オーストリアのザルツブルクで行われた)アルファタウリの発表会でクリスチャン(ホーナー/レッドブルのチーム代表)と会ったとき、私が『ホンダのHマークが大きくなったね』と尋ねたら、『そうだよ、大きくしたんだよ』って言われただけです。

 じつは昨年も予定よりも大きくなっていて、『ほら、ヤマモト、大きくしたぞ』と言われてビックリしました。本当にありがたいです。

 ロゴだけでなく、アルファタウリの発表イベントでは、VIPの送迎用の自動車にすべてホンダのCRVが用意されていました。新車15台だったかな。(レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート)マルコからも『自動車をたくさん売りたいなら、もっとマーケティングをやらないとダメだよ』と言われましたが、まったくその通り。レッドブルのそういう意識は、ホンダも見習わなければならないと痛感しました。

──逆にホンダのウェアからは、昨年あったIHIのロゴがなくなりました。

山本MD:IHIさんとは、技術的な提携は今年も続いています。昨年のロゴはスポンサーシップ契約を行っていたからで、その契約が1年だったため、昨年をもって満了したということです。HRD SakuraではIHIさんと部品の開発を一緒にやっています。

アルファタウリ・ホンダF1『AT01』新車発表会

■レッドブル&アルファタウリとの契約は2021年まで。2022年以降は?

──レッドブルおよびアルファタウリとの契約は2021年末までとなっています。2022年以降に向けては、どうなっていますか。

山本MD:もちろん、マルコとはいまも交渉を続けています。

──ホンダとしては続けていく意思はあるのでしょうか。

山本MD:条件次第です。やはりF1はモータースポーツの頂点であるからこそ、そこに自動車産業がチャレンジして、技術を磨くことができます。しかし、エンジンを2サイクルにしようとか訳のわからない話が出てくると、ホンダとしてはそんなF1と一緒に組むことに疑問が出てきてしまいます。

 また、見ているファンにとって、どう見られているのかも大切です。F1がモータースポーツの最高峰だということが一般の人たちから支持されなければ、われわれ企業としてもそこに参戦する価値は小さくなります。

 われわれも昨年の活躍で、今年は世界各地域の現地法人からF1をマーケティングツールに使いたいという要望を受けています。それだけF1にはマーケティング面で非常に高い価値があるということです。

──今年の若手ドライバーはいかがですか?

山本MD:すでに発表しているように、角田裕毅がカーリンからFIA-F2に参戦します。1月から2月にニュージーランドで行われたレース(カストロール・トヨタ・レーシング・シリーズ)ではシリーズ4位でしたが、本人のレポートを見ている限りでは、エンジンに当たり外れがあったみたいです。それはマルコも認めていて、『ホンダがトヨタのシリーズ出るってハードルがあるのかな』と言って笑っていました。

 彼は彼なりに成長していますが、これから始まるF2選手権ではライバルたちはもっと手強い。テストから帰ったら彼と会うので、色々今年のF2選手権に向けた話をして送り出したいです。

 もちろん、F2でシリーズチャンピオンを狙いに行かせるためです。中途半端な成績ではF1には乗れません。そういうことは、シーズン中に言っても頭に入れてもらえない。これは僕がモータースポーツ部長やっていた3年間で学んだことです。そこをきっちり伝えてあげたい。それをきちんと飲み込めれば、F3であれだけやれたわけだから、チャンスはあります。

──今年、F1のフリー走行に出走する可能性はありますか?

山本MD:まだ考えていません。フランツがリップサービスで言ったみたいですが、あれは私もネットを見て驚きました。

 昨年は(山本)尚貴が鈴鹿でフリー走行に出走するために、シーズンが開幕してからいろいろと話をしていましたけど、裕毅に関しては、まずF2で私たちを驚かしてほしい。だから、まだいまはそれについて話をするつもりはありません。

──昨年、F2に参戦していた松下信治選手とFIA-F3に参戦していた名取鉄平選手については?

山本MD:松下選手に関しては、子供のころからの夢であるF1にチャレンジしたいということで、ホンダとの関係は一時お休みして、今年は個人でF2に参戦します。名取選手は今年は日本で全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権に参戦して、一度リセットしてもらうことになりました。

初日に総合2番手タイムを記録した松下信治(MPモータースポーツ)
角田裕毅(カーリン)

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