読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、60歳までにいくら必要なのか知りたいという31歳の共働き主婦。定年までの30年間でいくら貯めたらよいのでしょうか。FPの氏家祥美氏がお答えします。
老後に夫婦2人暮らしていくためには、定年退職までの30年間でいくら貯金したらいいのでしょうか。2人とも正社員です。年収は、夫500万円、妻400万円ほど。夫の勤務先には退職金制度がありません。妻の私には退職金がありますが、おそらく1000万円程度です。
現在は、毎月の貯蓄のほか、子どもの学資保険(250万円)と夫の確定拠出年金に積み立てています。夫の確定拠出年金は年額70万円ほどです。その他は日々の生活や遊興費として使ってしまい、あまり貯まりません。
60歳までにいくらを目標に貯めたら人生困らないのか、教えてください。
<相談者プロフィール>
・女性、31歳、既婚(夫:29歳、会社員)
・子ども2人:5歳、3歳
・職業:会社員(フルタイム)
・居住形態:持ち家(マンション)
・毎月の世帯の手取り金額:53万円
(夫:31万円、妻:22万円)
・年間の手取りボーナス額:60万円
・毎月の世帯の支出目安:45万円
【支出の内訳】
・住居費:12万円(管理費含む)
・食費:6万円
・水道光熱費:2万円
・教育費:5万円
・保険料:2万円(学資保険含む)
・通信費:2万円
・車両費:1万円
・お小遣い:10万円
・その他:5万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:5万円
・年間ボーナスからの貯蓄額:20万円
・現在の貯蓄総額:300万円
・現在の投資総額:50万円(夫の確定拠出年金)
・現在の負債総額:3000万円(住宅ローン:残期間30年)
氏家:今回は、妻31歳、夫29歳の共働きのご夫婦からのご相談です。
現在、5歳と3歳のお子さんがいる4人家族で、持ち家のマンションにお住まいです。「60歳までにいくら貯めたら人生困らないのか教えてほしい」というご相談にお答えします。
若いって素晴らしい!
今回のご相談を拝見して、最初に感じたのが「若いって素晴らしい」ということ。最近は結婚年齢が上昇し、第1子出産年齢も上昇傾向にありますが、こちらのご夫婦は30歳前後にしてすでに二人のお子さんをお持ちです。下の子が大学を卒業するときに、妻50歳、夫48歳という若さです。ほかの家庭がこれから教育費のピークに入るという年齢で、教育資金から解放されて、老後資金を粛々と貯めていける期間が10年以上もあるのです。
住宅ローンもあと3000万円ありますが、残年数はあと30年。淡々と返していきさえすれば、夫60歳までに完済できます。きっと教育費が終了したら、繰り上げ返済をしていくことになるでしょう。ということで、老後に住宅ローン返済に追われる心配もありません。
今後の大きな出費は教育資金のみ
すでにマンションを購入しているので、頭金などで貯蓄がごっそり減ることはありません。今後想定される大きな出費としては、お子さんたちの教育資金のみですが、こちらも250万円の学資保険に一人分加入しています。
教育資金については今後もう少し手立てをした方がいいですが、それ以外は貯蓄を取り崩すことなく、貯まったお金は老後資金になると考えられます。
【退職金制度について】
妻の退職金は1000万円程度ある見込みです。夫の会社には退職金制度がないといいますが、掛け金が年額70万円ほどということでした。企業型確定拠出年金の最大額が月額5万5000円なので、年額66万円としておきますね。月額5万5000円ずつ、今後30年間拠出を続けると、積立額だけで1980万円になります。仮に平均3%で運用できたとしたら、運用評価額は3190万円になります。
【家計の状況】
現在月々5万円×12=60万円、これにボーナスから20万円ということで、年間80万円の貯蓄ができています。仮にいまのペースで貯蓄を続けられたら、80万円×30年間=2400万円が貯められることになります。これからまだ昇給もあるでしょうから、教育費など生活費が増えていってもカバーできるでしょう。
老後はひとまず問題なし?
今後の収入、暮らしの規模がわからないなかで断言はできないものの、いまの感じを見る限りでは、老後の心配はあまり必要なさそうです。
60歳時点では、妻の退職金が1000万円、夫の確定拠出年金が60歳時点で1980万円+運用益が見込めます。そこに、今後約30年分の貯蓄(現在のペースで80万円×30年=2400万円)と現在の残高300万円が上乗せできます。運用益を考えないで、合計5680万円になりますね。この段階で住宅ローンは完済し、お子さんが大学を卒業して10年ほどたっていますから教育費からも解放されています。
【退職時のお金】
妻の退職金:1000万円
夫の確定拠出年金:1980万円+運用益
現在の預貯金:300万円
今後の預貯金:2400万円
<合計>5680万円+運用益
続いて支出をざっくりと計算すると、現在の生活費45万円から住宅ローン12万円を差し引いた33万円がひと月の生活費だとします。60歳で退職後、5年間年金のない生活をしたとして、この間の取り崩し額は33万円×12ヵ月×5年=1980万円と計算できます。
残った3700万円(5680万円-1980万円)を65歳から30年間で取り崩すとすると、1ヵ月あたり10.2万円が使えます。「夫婦の厚生年金+10万円」が30年間ですから、しっかり準備できている方でしょう。
【老後の生活費】
60歳から5年間:33万円×12ヵ月×5年=1980万円
65歳から30年間:10.2万円×12ヵ月×30年=3672万円(夫婦の厚生年金以外)
<合計>5652万円
大切なのは、これからどう暮らしたいか
どうぞ、将来の不安をいったん手放して、これから家族としてどんな風に暮らしていきたいかを、ご夫婦で話し合ってください。お子さんたちにどんな風に育ってほしいのか、教育はどうしたいのか、家族としての趣味や旅行、夫婦それぞれのキャリアプラン、考えておくことはたくさんあります。
それによって、今後かかる教育費は変わってきますし、レジャー費の使い方も変わります。自己投資にお金をかけて転職や昇進を目指すのか、余計な時間やコストをかけずに今のペースを守って働くのか、といった選択もあるでしょう。
お子さんたちはどんどん大きくなって、家族としてもいろんなことができるようになります。いまも老後もひとまず問題はないので、家族としてのこれからの30年間でやりたいことを楽しく考えてみましょう。