「東京六大学3冠王」が見せる片鱗 中日ドラ4郡司が狙う正捕手の座「最後はハナ差で」

中日・郡司裕也【写真:小西亮】

加藤の2軍降格を間近で見て、プロの厳しさを改めて実感

 初々しさの一方で、日ごとにたくましくなる表情。中日ドラフト4位ルーキーの郡司裕也捕手が、1軍で存在感を示し続けている。オープン戦でマスクをかぶってリードや投手との呼吸を学びながら、「東京六大学の3冠王」らしくバットでもアピール。何もかもが初めての経験を全身で吸収し、糧にしている。

「自分も、ビクッってなる感じでした……」

 初めて目の当たりにした光景に、郡司は思わず身震いした。オープン戦開幕となった2月22日の北谷球場での阪神戦の試合後、スタメンマスクを被り、3投手をリードして6失点を喫した加藤匠馬捕手が2軍行きを告げられた。報道陣の取材に「覇気がない」と怒気を帯びた声で答える伊東勤ヘッドコーチ。対照的に、険しい表情のまま無言で大きな荷物を抱えて球場を後にする加藤。郡司は思わず背筋を伸ばして言った。

「明日は我が身だなと。アマチュア時代だと、少しは大目に見てもらえていた部分もありました。やっぱり厳しい世界だと、改めて実感しました」

 結果や内容が伴わなければ、容赦なく淘汰される。入団前から頭では分かっていたが、いざ現実を見せつけられると、プロの世界に身を投じた覚悟は一層増す。

捕手としては試行錯誤が続く一方で打席では東京六大学リーグの「3冠王」たる所以を見せる

 翌2月23日のDeNA戦では、自身がオープン戦で初めてマスクをかぶった。6回から途中出場し、まずは昨季11勝の柳裕也投手とコンビを組んだ。3学年先輩の右腕は「郡司がやりやすいように」と気を配って「リードは任せたから」と言ったが、郡司にとっては逆効果だったようで「柳さんから任せるって言われて、一瞬『えっ』って困っちゃいました」。その回は3失点を喫し、反省の船出となった。

 キャンプ序盤からブルペンで投手陣の球を受けてはきたが、実戦はまた違う。その場の状況、打者の特徴、投手の状態……。「ピッチャーとの信頼を築いていかないといけません」。バッテリーには“阿吽の呼吸”が不可欠。柳は試合後「逆に迷わしちゃったよな、悪かった!」と平謝りだったが、ルーキーにとっては貴重な教訓だった。

 扇の要では試行錯誤の一方で、打席では快音が続く。13日時点で9打数4安打、打率.444。「それで目立つしかないですから」と苦笑いしていたが、慶大4年秋に東京六大学リーグの「3冠王」を獲得した前評判に違わぬ打棒を見せる。オープン戦序盤は「まだ甘い真っすぐしか打っていませんから」と謙遜していたが、裏を返せば打つべき球を捉えられているということでもある。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日程は不透明な状況に。ひとまずは4月中とみられる開幕に向け、さらに競争は激化する。まずは開幕1軍。さらに、郡司の意識は高みにある。「開幕マスクは虎視眈々と狙っていますよ。食らいついていきながら、最後の最後でハナ差で抜け出したい」。まだキャンプインから1か月半。成長速度は加速している。(小西亮 / Ryo Konishi)

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