恋愛にも新型コロナの影響…同棲生活が突然変わってしまった男女とお金

新型コロナウイルスはさまざまなところに影響が出ています。見えにくいかもしれませんが、男女関係にも影響が及び、デートがままならないカップルもいるし、この病気に対する考え方の違いからケンカが絶えないカップルも。


お金がなくてイライラしている彼

同い年の彼と一緒に住み始めて1年足らずのアズサさん(31歳)。彼女は中堅企業の正社員、彼はイベントなどを運営する会社の非正規職員です。つきあって2年、そろそろ結婚も視野に入れていたといいます。

「ところがコロナウイルスのせいで、彼はほとんどすべてのイベントが中止になって自宅待機。私は週の半分くらいテレワークという状態です」

もともと彼が住んでいた1LDKのマンションで同居を始めました。彼女は残業もけっこうあったし、彼は仕事柄、出張も多く、多忙になると数日間は帰ってこられないような状態。だから1LDKにふたりで暮らしていても、あまり閉塞感を覚えない住環境でした。

「でも今はダメです……。家で仕事をしているとき、私はリビングを使っていますが電話もしにくい。彼は暇すぎて、寝室でゲームをやっているか寝ているか。気力もなくなっているんでしょうね、何日もお風呂に入ろうともしないから臭くていたたまれない。近所のファミレスで仕事をしようと思ったら、そこは子連れのママさんがたくさんでやはりうるさくて」

最初のうちこそ、状況がよくなったらこんなイベントをやりたいと企画を口にしていた彼ですが、今はもはやそういう気概もなくなりつつあるようです。

「私が出社して帰ってきても、家は真っ暗。出かけたのかなと思うと寝てる。そんな彼を見るのはつらいです。誰もが苦しい状況なのだから、せめて簡単でもいいから夕飯でも作っておいてくれれば話も弾むかもしれないのに」

仕事が大好きだった彼にとっては、何もできない状態がつらいのでしょうが、彼女の言うことにも一理あります。こんなときこそ、せめてふたりで仲良く食卓を囲み、今後の楽しい噺をしたいものではありませんか。

お金を置いていくせつなさ

ふたりの間の会話も減っていきました。そんなある日、朝出かけようとすると、テーブルの上にメモが置いてあります。彼の字でした。

「少しお金を貸してほしい。1万でもいいからって。あ、と思いました。彼、もともと非正規だったし、いくら仕事が忙しくてもそれほど高給ではなかったはず。貯金だってしていなかったのではないかと。お金がないって心寂しいですもんね。その日、私は2万円置いていきました」

それ以来、彼女は3日に1度くらい1万円を置いていくようになりました。彼から感謝の言葉は一度もありません。

「私だって彼との生活をひとりで支えられるほど稼いでいません。でも彼が落ち込んでいるのを見たくない。だから少し貯金を取り崩して生活していたんです。ところがある日、職場で、今日はみんな早めに帰ってほしいという指令が出たことがあり、午後3時ごろ自宅最寄り駅に着いたんです。そうしたらパチンコ屋から彼が出てきてばったり出くわして……。いや、いいんですよ、彼があのお金を何に使おうとかまわない。だけど彼、私の顔を見て逃げたんですよ。それがショックだった」

仕事がないのは彼のせいではないのに劣等感を覚え、その気持ちがねじ曲がっていくのです。彼女からお小遣いをもらっていることを申し訳なく思いながらも、感謝することも彼女を手伝うこともできずにいるのでしょう。

「逃げていく彼の後ろ姿が、なんともいえず悲しくて。そのまま帰宅したら彼は帰っていませんでした。その日、私は身の回りのものをもって実家に戻りました」

実家は会社から少し遠いのですが、それでも彼と一緒にいる気まずさから逃れたかったとアズサさんは言います。彼からは連絡がないままですが、彼女は先日、彼と住んでいたマンションの郵便受けに3万円ほどのお金を入れた封筒をつっこんできました。

「食べられなかったらかわいそうだなと思って。彼がいるかもしれないので部屋には入りませんでしたが、この先、どうしたらいいかわかりません」

じつは知らなかった相手のこと

家賃はずっと彼が払っていました。今後も払えるのかどうか。そもそも彼に本当に貯金がないかどうかもわかりません。

「一緒に住んではいたけど、私、彼のことを何も知らなかったんだと気づきました。何かあると彼は部屋に籠もったりパチンコに行ったりして、まったく協力してくれないこと、話し合おうとさえしないこと。知り合ってからずっと彼はいつも仕事で忙しかったけど、会えば生き生きしていました。まあ、仕事がなくなるなんて彼も私も思ってもいない事態だから、戸惑うのはわかるんですが」

それならいっそ泣きついてくれたほうがいい。どうしよう、アルバイトをしたほうがいいよねとでも言ってくれれば、今のうちに今後、仕事で使えそうなアイデアをためたり勉強したりしたほうがいいんじゃないかなと彼女は答えるつもりだったそうです。

「ひとりで悲劇を抱え込んで落ち込んでいる彼を見ると、みんな同じだよ、ひとりで落ちていても何も解決しないよと言いたくなりました。でもそういうことを言うと、きっとさらに沈んでいくだろうなと思って何も言えなかった」

非正規で働いている人、フリーランス、だれもがつらい状況です。でも一緒に住んでいる彼女にそこまで心配されるなんて、逆に幸せだともいえるのではないでしょうか。彼女の愛情をきちんと受け止められない彼、そして愛情を受け止めてもらえない彼女。これからこのカップルはどうなっていくのでしょうか。

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