WEC:ポルシェ、LMDhでプロトタイプ復帰検討も、GTEプログラムへの影響判断は「時期尚早」

 2017年末にWEC世界耐久選手権のLMP1カテゴリーから撤退したポルシェは、LMDhプラットフォームを用いてふたたびプロトタイプレースに戻ることを熱望しているが、これが現在活動中のGTEプログラムにどのような影響を与える可能性があるのかを述べるには「時期尚早」であるという。

 ポルシェのGTファクトリー・モータースポーツ部門を率いるパスカル・ズーリンデンは先月30日、記者団に対して、LMDhがポルシェが行っている大規模なGTワークスプロジェクトと共存することは「オプション」であり、現時点ではなにも決定していないと語った。

 2020年1月に北米のIMSAと、ACOフランス西部自動車クラブによって共同発表されたLMDhプラットフォームの登場は、メーカー主導のGTEプログラムの将来に疑問を投げかけている。

 フェラーリは先月、現在LM-GTEカテゴリーに参戦しているメーカーが新しいプロトタイプ・プラットフォームに参入した場合、既存カテゴリーは「問題に直面するだろう」と示唆した。

 ポルシェはイタリアのメーカーとGTEクラスで戦うブランドのひとつだが、ポルシェR&D部門の取締役であるマイケル・シュタイナーはこの新しいプロトタイプカテゴリーでのプログラムについて、同社が評価を行っていることを明らかにした。

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の次世代トップカテゴリー規定であるLMDhの導入により、自動車メーカーは北米シリーズとWECの両シリーズに同じクルマで参戦できるようになる。また、デイトナ24時間やル・マン24時間といった象徴的な耐久レースにも同様に参加可能となる。

 ポルシェは2017年にプロトタイプレースから撤退し、以後はGTEプログラムに注力。2018/19年シーズンのWECでタイトルを獲得すると、2019年には最新型911 RSRを投入した。

「私たちは2019年の初めにLMHル・マン・ハイパーカーのルールを確認したが、LMHはとてもコストの掛かる規則であり、ACOのシリーズでしかレースができないと考えた」とズーリンデンは語った。

「一方、LMDhは1台でふたつの選手権を戦うことができるメリットを持っている。また、我々が持っている情報によれば、予算が非常に低く抑えられ、それは現在のGTプログラムに匹敵する」

「私たちは過去、LMP1に居ながら同時にGTEプログラムを行っていた。そのためLMDhに入る場合も(両カテゴリーに参戦する)オプションを考えている。だが、この件に関してコメントをするにはまだ早すぎる」

■LMDh参入ならカスタマープログラムを開始か

 ズーリンデンは、3月中旬にセブリングで発表される予定だったLMDhの技術規定に関するアナウンスが、まもなく行われることを期待しているひとりだ。

 この新しいプロトタイプの規則に関心を示しているほとんどメーカーは、参入を約束するにはルールが公開されるまで待つ必要あると述べている。

「まだ調査の段階であり、(LMDhに)参入するかどうかは判断できない」とズーリンデン。

「取締役メンバーであるマイケル・シュタイナー氏は(新しい規則で)何ができるのかを調査するため、我々に研究を依頼した。レギュレーションはまだ発表されておらず、数日遅れていると思われる」

「ACOとIMSAは新型コロナウイルスの“パンデミック”の影響を受けてホームオフィスに入っているが、彼らはまだ作業に取り組んでいるようだ」

「私たちが求められているレギュレーションの研究ができるように、新しい規則が早いうちにアナウンスされることを望んでいる」

 なお、ズーリンデンはもし、ポルシェがLMDhにコミットするのであればカスタマープログラムを開始する用意があることを示唆した。

「仮にクルマがGTEのような手頃な価格になるのであれば、それは間違いない検討すべきものだ」と彼は語った。

2017年ル・マン24時間のウイナーとなったポルシェLMPチームの2号車ポルシェ919ハイブリッド

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