アンケートに答えただけなのに 自分の名義で数十万円の借金の申し込みが

企業の商品やサービスに関するアンケートに答えると、ポイントの形で報酬がもらえるサイトがたくさんあります。また、電話や郵送を通じて公的機関やマスコミから質問に答えてほしいという依頼もあり、アンケートというものは私たちの身近な存在になっています。それだけに、これを利用した詐欺も多いのです。


若者が狙われる

振り込め詐欺の被害は相変わらず多く発生しています。そのターゲットになるのは中高年の人たちで、息子や役所を騙ったアポイント電話(詐欺の前触れ電話)がたくさんかかってきます。そして、うっかり家族状況やお金の状況を話そうものなら、その人に合わせた形の詐欺が行われます。これは、オーダーメイドな詐欺ともいえます。スーツを仕立てるときに身体にメジャーをあてながら、その人にあった服を作りますが、詐欺もまた同じで、電話というメジャーにあたるツールを使いながら、相手の状況を事細かに採寸して、その人にぴったり合ったの詐欺の服を着せてくるのです。そのフィット感が完璧なので、本人は騙されていることに気が付かないのです。

では、若者はどのような騙しの“服”を着させられるのでしょうか?

そのひとつにアンケートによる詐欺があります。国民生活センターには、次のような被害相談が寄せられています。

20代の男子学生が大学内で、ある人物から声を掛けられました。話を聞けば「アンケートに答えれば、お金がもらえる」とのこと。そこで友達と一緒に回答して、2,000円をもらいました。おそらくこの程度のことなら「大丈夫!」と思う人も多いかもしれません。しかしこの時点で、詐欺師に片足をつかまれている状況なのです。

さらに相手は「後日、1,000円の報酬を振り込みたい」と言い、学生から名前、電話番号、銀行口座番号と暗証番号を聞き出します。さらに、住所確認のために運転免許証を見せるように言ってきました。

後日、学生が相手の連絡先に電話をかけると、なんと消費者金融につながったのです。そこでわかったのが、この学生の名義で30万円の借金がされていたという事実でした。

高齢者詐欺との共通点

これはアンケートと称し個人情報を聞き出して、スマホで消費者金融のサイトにアクセスして借金をして、お金を騙し取る手口です。しかも、謝礼をあげて信頼させたうえで、個人情報を聞き出すなど非常に巧妙といえます。

やはりここでの一番の問題は、暗証番号を教えてしまったことでしょう。口座からの引き落としの登録をするときには、暗証番号が必要になりますし、学生は「借入金は口座には入金されていない」とも言っていますので、事前に口座の変更をしたのかもしれません。どうしても若い世代は、口座にたいした預金がないから大丈夫と思って、安易に暗証番号を教えてしまいがちですが、そこが危険なのです。

おそらく「アンケートのアルバイト」と声をかけた段階で、小遣いがほしい状況や、この種の騙しに免疫のない人だという情報も得たうえで、詐欺を行ったと思われます。若い人たちはお金がもらえてラッキーと思わされながら、詐欺の“服”を着させられるケースが多いのです。

考えてみれば、この手口には高齢者の被害が多発している特殊詐欺との共通点も見られます。

今、被害で多いものに、キャッシュカードの詐取があります。警察関係者が「あなたの持っている銀行口座からお金が不正に引き出されている」と嘘の電話をかけて、「キャッシュカードを止めてください」「カードを新しいものにかえてください」といって、家にキャッシュカードを騙し取りにきます。警察庁が発表した令和元年の特殊詐欺の被害では、このカード窃盗によるものは、全体の認知件数の54%に上っています。やはり、この手口においても相手に暗証番号を教えてしまっていることが肝でしょう。それにより、騙し取られたカードでATMからお金が引き出されてしまいます。

ここから、世代別の詐欺の手口が見えてきます。

学生はお金がたんまりと入っている銀行口座は持っていませんので、スマホの画面にて相手の個人情報を勝手に入力してお金を借り、それを騙し取るというデジタルな方法を取ります。それに対して、高齢者はたくさんの貯金をもっているので、キャッシュカードを騙し取ったうえでATMからお金を引き出すというアナログな手法を使います。ただし、暗証番号を入手して、お金を取るところは同じです。

現代の詐欺は、「暗証番号を聞き出す」です。くれぐれも大事な情報は第三者に教えないようにしてください。

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