一日一日を大切に 絶対に勝てる大将でいたい 剣道 島原 岩本瑚々 信じて前へ 高校のエースたち・7

「チームを勝たせる大将になりたい」と自らを磨く岩本=島原市、島原高剣道場

 インターハイ、国体、玉竜旗…。島原高女子剣道部はこれまで、数々のタイトルを獲得してきた。唯一、手にしていないのは3月の全国高校選抜大会の優勝旗。迎えた昨年の準Vメンバーが多数残った今季。チームの「自分たちで初優勝を成し遂げる」という決意は、新型コロナウイルス感染拡大による大会の中止で断たれた。「ショックは大きかったけれど、まだ終わりじゃないから」。主将の岩本瑚々は懸命に前を向く。
 大分市出身。杵築中3年で全国中学大会個人を制した。卒業後は「団体で日本一になりたい」と島原高へ進学。程なくチームの次鋒に起用された。170センチ近い長身に分析力や勝負強さも備える大器。全日本剣道連盟の女子選抜特別訓練講習生50人にも1年から選ばれている。
 一方で、福田俊太郎監督が「優しくてきちょうめん。そこが良さでもあるけれど」と評する一面も。1年の秋以降は大将を任されたが、最初は重圧から「大将、いやだな…」と弱気になっていた。チームが負けると責任を感じ、そんな自分を許せずにいた。
 その状況で「何のために島原へ来たのか」と自問自答してみた。「日本一になるには、大将が勝てればいい」。腹をくくると、2年の夏ごろからは際どい勝負を大将戦や代表戦で決められる試合が増えた。仲間たちも同じ目標に向かって着実に成長。まだ見ぬ春の頂点へ準備は整っていた。
 それだけに、選抜の中止には「なかなか気持ちが切り替えられなかった」。3月に入ってしばらくは、地元に帰って自主練習の日々。下旬に部活動が再開されたが、4月からは対人稽古の自粛で体力トレーニングや基礎練習しかできていない。そして再び、18日から5月6日までの部活休止も決まった。
 いつものように桜が咲いても、いつもと違う春。だが、福田監督はこの期間がプラスに働くことを期待する。「自分に甘えず努力を重ねたかどうか。心身両面で差が出てくる」。そして、ようやく試合ができた時。剣道ができるありがたさを思い切り表現できたら「一回り強い島原になれるのではないか」と。
 岩本も今は、そんな自分たちに期待して一日一日を大切に過ごしている。「インターハイが高校で日本一になる最後のチャンス。勝負が回ってきたら、絶対に勝てる強い大将でいたい」。心地よく見られなかった桜の分まで、夏は最高の景色を見に行こう。

 


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