子ども2人の学資保険に月10万「薬剤師の夢をかなえてあげたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、上の子に続き、下の子も私立中学に進学させたいという40代主婦。上の子が希望する薬学部の教育費や夫婦の老後に備えて、今できることが知りたいといいます。FPの氏家祥美氏がお答えします。

この4月から上の子が、私立中学校に入学します。4年後には下の子も中学受験の予定です。しかも、長女は将来、薬剤師になりたいと言っています。まだ先なのでわかりませんが、お金がないからという理由で薬学部をあきらめさせるのはかわいそうなので、なんとかしてあげたいです。

また退職金がないため、老後の生活が不安です。子どもの教育費や老後に備えて、今のうちからできることが何なのか知りたいです。

<相談者プロフィール>

・女性、43歳、既婚(夫:43歳、会社員)

・子ども2人:12歳(中1)、8歳(小3)

・職業:会社員

・居住形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:45万円

・年間の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出目安:45.5万円

【支出の内訳】

・住居費:5万円

・食費:5万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:10万円

・保険料:学資保険10万円※、養老保険3万円、生命保険1.5万円

・通信費:2万円

・車両費:1万円

・お小遣い:3万円

・その他:3万円

※長女18歳時に1200万円、次女18歳時に900万円受け取る予定

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1万円

・年間ボーナスからの貯蓄額:120万円

・現在の貯蓄総額:500万円

・現在の投資総額:なし

・現在の負債総額:1000万円(住宅ローン:借入額1780万円、金利0.975%、返済期間35年)


氏家:今回は、お子さんの「薬剤師になりたい」という夢をかなえてあげたいご夫婦からのご相談です。子ども2人を中学校から私立に進学させて、そのうち1人を薬学部に進学させても老後は成り立つのかを、一緒に考えていきましょう。

学資保険で手厚く準備、子ども2人の教育費

ご相談者さんは、お子さん2人分の学資保険に加入しています。長女が18歳時に受け取る満期金は1200万円、次女が18歳時に受け取る満期金は900万円と、他の家庭にくらべて手厚く教育費準備をされています。

1200万円を18年間(216ヵ月)で貯めるには、1ヵ月あたり5.55万円、900万円を貯めるには1ヶ月あたり4.17万円が必要です(概算のため金利を考慮せず)。5.55万円+4.17万円=9.72万円となり、ご相談者さんはこの約10万円を二人分の学資保険の保険料として毎月家計から捻出しています。

長女が18歳を迎えると1200万円の満期金を受け取ると同時に、月額5.55万円の積立が終了します。同じく、次女が18歳を迎えると900万円の満期金を受け取ると同時に、月々4.17万円の積立が終了します。

学資保険からの満期金で大学資金が捻出できれば、学資準備から解放されることになります。

薬学部6年間の学費は「1200万円」

私立大学薬学部の学費は、その他一般的な理系学部よりも高く、医学部や歯学部よりは低い相場となっています。

進学支援サイトの学費ランキングや、各大学のホームページ等から学費を調べたところ、大学によってばらつきがありますが、1年間の学費が200万円前後、入学金を加えた初年度納入金は250万円前後が目安になりそうです。年間200万円×6年間=1200万円と考えると、学資保険の満期金1200万円で6年間の学費はなんとか賄えそうです。

このほか、大学に納める入学金、受験費用、教科書代などの必要経費はまだ含まれていないので、100~300万円程度を上乗せして考えておきましょう。

次女の大学費用も学資保険で賄えるか?

次女には900万円を学資保険で用意されています。

図表1の文部科学省のデータを見る限り、医歯系学部以外であれば、大学4年間にかかる学費、施設設備費、入学時に払う入学金は捻出できそうです。理系専攻の場合には大学院に進学する割合も高くなりますが、2年間上乗せしても900万円以内でカバーできそうです。

今後の教育費と貯蓄のペースを予想する

ふたりのお子さんについて、大学進学以降の見立てができたところで、現在から高校卒業までのお金の出入りをざっくりと計算してみましょう。図表2も合わせてご覧ください

【2020年から2年間】
毎月の教育費が10万円(年間120万円)かかっています。長女の中学受験の塾代が主な使い道となるでしょうか。ほぼ同額が、私立中学の学費になると考えると今年と来年の2年間は現在のペースが続きます。

【2022年から3年間】
3年後には次女が小5になり、中学受験準備も本格的になるでしょう。その後、無事に合格した後は、次女にも私立の学費がかかります。長女も同額がかかっているため、2022年からの3年間は、ボーナス貯蓄120万円と次女(小5~中1)にかかる教育費が相殺され、貯蓄がまったくできなくなることが予想されます。

【2025年は支出がピークに】
6年後、2025年になると長女が高3になります。薬学部を受験するとなると、学校とは別に塾や予備校へ通うことになりそうなので、年間120万円の塾代を想定しておきましょう。子ども2人が私立で、別途一人分の塾代がかかるため、ここが教育費のピークとなります。

一方で、2025年には学資保険が満期になって1200万円の受け取りができるように。ここで長女の学資保険の支払いが完了し、年間の学資保険料は50万円ほどに下がります。

【2026年に長女が薬学部入学】
薬学部の基本的な授業料は学資保険で6年分捻出できると考えます。キャッシュフローでは長女の学資保険からの収入支出を「黄色」で示し、別途家計から捻出する受験費用と、初年度だけ払う入学金として、2026年に120万円だけを計上しておきます。

【2029年に次女が高3】
次女が高校3年生になる2029年には、次女に私立高校の学費と塾代がかかるため、年間240万円としています。ただし、次女の学資保険が満期を迎えて900万円が受け取れるほか、学資保険の支払いもなくなります。

【2030年に次女が大学に進学】
次女の学費については、大学4年間にかかる費用は学資保険900万円でカバーできています。また、複数校分の受験費用と、初年度だけ払う入学金もその範囲内で工面できるでしょう。キャッシュフローでは次女の学資保険からの収入支出を「オレンジ色」で示しておきます。

一人暮らしなどで足りない分は奨学金の利用を

お子さん2人の学資保険をしっかりと備えているため、学資保険で大学費用を概ね確保できそうです。学資保険の積立も終わるため、お子さんが大学に入るタイミングで一気に家計の貯蓄率が上がり、老後資金準備にシフトできます。

このようにしっかり準備をしていても、お子さんの進学に関しては、「ひとり暮らし」や「留学」など想定外の希望が出てくることがあります。また勉強が忙しく、「アルバイトができないからお小遣いが欲しい」といったこともあるかもしれません。

しかし、これ以上、お子さんへの援助を増やすと老後資金が貯められなくなります。学資保険で不足する部分については、本人が長期休暇にアルバイトをする、足りない分は奨学金を借りるなどして本人に負担させることも考えましょう。

収入が減る可能性も、年収の変化に注意を

キャッシュフローでは、単純に現在の収入、支出が今後もずっと続く前提で示しましたが、給料は右肩上がりになるとは限りません。勤務先にもよりますが、50代に入ると役職手当がなくなる、給与の上昇がなくなることが想定されます。

その場合、老後資金が順調に貯められなくなる可能性があります。現状では60歳以降も住宅ローン返済が続くと思いますので、60歳以降も働き続けられるよう準備をしておく、家計の余裕を見ながら住宅ローンの繰り上げ返済をしておくことも必要でしょう。

© 株式会社マネーフォワード