なぜ無観客のスタンドに? 楽天ガールズ今井さやかさんが語る台湾文化とチアの重要性

楽天モンキーズのチア「楽天ガールズ」の今井さやかさん【写真:本人提供】

世界最速で開幕し、8日には観客の入場も解禁された台湾プロ野球

新型コロナウイルスの感染拡大で日本のプロ野球やアメリカのメジャーリーグなどは開幕が延期となり、新たな開幕日が定まらないでいる。その一方で“世界最速”で開幕を迎えたのが台湾プロ野球だ。4月12日にシーズンが開幕し、5月8日は最大で1000人ではあるものの、観客の入場も解禁された。

いち早く開幕を迎え、そして観客の動員も始まった台湾プロ野球。台湾国内のみならず、日本やアメリカなど海外からも注目を集めてきた。そんな中で気になった人も多いのではないだろうか。開幕直後は無観客開催だったにも関わらず、スタンドには可愛らしいチアリーダーと応援団の姿があり、歌い、踊り、応援していた。

なぜ無観客開催なのにチアリーダーなのか? そこには台湾プロ野球界の特徴と台湾球界におけるチアリーダーたちの役割があるよう。そこで、楽天ガールズのメンバーとして活動する唯一の日本人である今井さやかさんに台湾プロ野球とチアリーダーの存在について話を聞いた。

ロッテの本拠地ZOZOマリンスタジアムのNo1ビール売り子で「カンパイガールズ」の元メンバーだった今井さん。2018年からラミゴモンキーズのチアチームである「ラミガールズ」の一員となった。当初は期間限定の加入だったが、その存在が認められ、楽天ガールズとなった今季で3年目を迎えた。

本来であれば、2月下旬には今井さんも台湾へ渡り、楽天ガールズとしての練習に参加するはずだった。だが、新型コロナウイルスの影響で渡航できず。“世界最速”で迎えた台湾プロ野球の開幕も、日本で見届けることになった。

まず根本的に日本のプロ野球と台湾のプロ野球では“文化”が違う、と今井さんは言う。日本の応援は外野席が中心だが、台湾は内野席が中心だ。チアリーダーたちはベンチの上あたりで大きな音楽に合わせて歌い、踊る。それが台湾の応援スタイルで「台湾は熱いけど、いい意味で緩いですね」と今井さんは違いを語る。

異なる野球文化と国民性「台湾の人たちには恥ずかしがるところがない」

そして、国民性の違いも感じるという。「日本の人たちはシャイなところがありますけど、台湾の人たちはそういうところがありません。1人で来ているお客さんでも、男性でも一緒になって踊っています。とてもフレンドリーですし、恥ずかしがるところがないですね」。だからこそ、大きな音楽に合わせてチアリーダーが踊る応援スタイルがスタンダードとなっている。

ファンがおらず無観客で開催されているにも関わらず、チアリーダーたちがスタンドで踊る姿に違和感を覚えた人もいるだろう。日本のテレビ番組でも取り上げられたほどだ。だが、台湾ではこれは普通のことだと今井さんは言う。「チアのいない野球は台湾のプロ野球じゃないという文化。いま現地にいるわけではないので正確な理由は分かりませんが、テレビで見ているファンの人たちに楽しんでもらうためだと思います」と台湾プロ野球でのチアリーダーたちの立ち位置を解説する。

台湾プロ野球のチアリーダーたちの中には芸能の仕事もし、テレビに出ているような女性も多いという。日本でも有名な中信兄弟のチュンチュンなどはそのいい例だ。今井さん曰く「台湾ではチアの子たちは人気がとても高く、例えばSNSのフォロワーが何十万人もいる子がいます。台湾プロ野球ではチアリーダーがいる目の前には、野球よりもその子たちだけを見にきているファンもいる」のだという。

台湾プロ野球は野球だけでなく、こうしたチアリーダーの存在も含めて1つのエンターテインメントとして成り立っている。野球を見たいファンだけでなく、チアリーダーたちを見たいファンたちも多くいる。「踊ってる様子を見てもらい、人々に楽しんでもらおう、ということだと思います」。テレビを通して、多くのファンに喜んでもらうことに意味があるようだ。

「チアがいたり、応援があるだけでも、選手たちにとっても空気が違うと思います。台湾プロ野球の魅力は、やっぱりあの応援スタイル。日本人の方でも現地で見てもらえれば、ハマる人も多いと思います。チアリーダーたちはカメラを向ければ、必ず目線をくれるので、それにハマる人もいるはずです。きっと楽しんでもらえると思うので、コロナが収束したら台湾のプロ野球も見に来てもらいたいですね」と語る今井さん。日本とはまた異なる文化を持つ台湾プロ野球。チアリーダーたちの存在もまた、球界を彩る大事な要素なのだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2