湘南乃風のメンバーで、伸びやかな高音パートを得意とするHAN-KUNの初カバー・アルバム。2019年の作品だが、“STAY HOME”が重要な今、カラリと晴れた夏空の気分を満喫できるのでおススメしたい。
世界的レゲエ・ディージェイによる紹介の後の全11曲、レゲエ風にアレンジしてカバーしているのだが、J-POP系の大ヒット曲ばかり選んでいるのが興味深い。このうち7曲が90年代、しかも4曲がWANDSやT-BOLAN、DEEN、TUBEなど、彼の男気ある高音のルーツはビーイング系だと分かる。特に『湘南My Love』は、TUBEの大ファンじゃないかと思うほどだ。また、『木蘭の涙』は原曲のスターダスト☆レビュー以上にフェイクが多く、それでいてリズムを乱すことなく、超絶に上手い。
さらに、7曲目以降がレゲエ風で大きく変わる。『ひまわりの約束』は陽気な友情ソングになるし、『空も飛べるはず』や『Tomorrow never knows』は、ワクワク感が半端ない。11曲中最も古い『上を向いて歩こう』も、どこまでも澄んだ青空が見えてくる。これぞまさにウタヂカラだろう。今回はすべて男性曲だが、この声で女性アーティストの楽曲も聴いてみたくなった。
ラストは、MONGOL800の『あなたに』で、熱気を帯びた歌声やレゲエのリズム、さらに愉快な歌詞を追加したことで、より濃密なラブソングとなっている。本作を聴けば、奇をてらうことなく王道の魅力を素直に受け入れられるようになるはず。
（ユニバーサル・通常盤2500円＋税）臼井孝
