長崎県、離島への渡航自粛緩和 不安根強く「第2波が心配」

 島ににぎわいが戻るのはいつになるのか。長崎県は15日、離島への渡航自粛要請を緩和し、県内に限り離島との往来自粛を解除した。観光関連業をはじめ、来島者の激減で打撃を受けている島内経済。それでも島民らは自粛緩和を手放しでは喜ばず、新型コロナウイルスが持ち込まれることへの不安や、経済回復に懐疑的な見方を口にした。
 都市部より医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で高齢化率も高い離島。市町単独でも来島自粛を呼び掛けてきた対馬、五島、新上五島3市町は、県に歩調を合わせ、渡航自粛の対象を「島外」から「県外」に緩和。壱岐市も県に準じる。一方、北松小値賀町は5月末まで、県内外からの渡航自粛を求め続ける。
 島外からの“外需”に頼る観光業界。五島市の土産品店「山本海産物」はこの数カ月の売り上げが、例年より8割減った。山本泰三社長(57)は自粛緩和について「少しでも解除が広がるきっかけになれば」と願いつつも、「来客がコロナ前に戻るには、長い時間がかかると思う」と不安げ。新上五島町で五島うどん専門店を営む浜崎祥雄さん(33)も「夏場に集客できるのか不安は残る。営業スタイルの変更も検討しないと」と慎重姿勢を見せた。
 福岡県と海空路でつながる対馬市の男性タクシー運転手(63)は「長崎県内は3週間以上、感染者が出ておらず少し安心。福岡のお客も受けるが、窓を開け、密閉を避けて運転する」。壱岐市でホテルを営む吉田繁さん(67)は「福岡との渡航自粛が解除されない限り、経済回復の期待感は持てない」と話した。
 住民の不安は根強い。新上五島町の自営業、宮崎邦弘さん(72)は「島にお金を落としてもらうことも大切だが、第2波、第3波も心配。しばらく渡航自粛を継続してほしい」。小値賀町の30代自営業女性は「ウイルスの正体もはっきりせず、医療機関も万全ではない。(自粛解除は)慎重に見極めて」と求めた。

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