“区切りの場” 舞台提供へ準備進める <中止の波紋>第72回長崎県高総体・下

昨年の県高総体陸上で熱戦を繰り広げる選手たち=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

 部活動を続けてきた多くの3年生にとって、長崎県高総体は高校最後で最大の目標だった。「何もしないで終わるのは悔しい」「気持ちの整理がつかない」。そんな選手たちのために、何らかの“区切りの場”を設けられないか。各競技や学校、チームなどは今、集大成の舞台を提供するための準備を進めている。
 政府の緊急事態宣言解除を受けて県は15日、他校との交流禁止としていた部活動の実施要件を緩和。新型コロナウイルス感染拡大防止策を徹底した上で、25日から「県内のみで宿泊を伴わない」という条件付きの大会参加などを認めた。
 この県の方針を順守すると同時に、各競技の中央団体や日本スポーツ協会の“ガイドライン”に沿って何ができるか-。県高総体で実施予定だった全32競技の専門部委員長に、17日までの状況を聞いたところ「上がっている案をどう実行できるか」という回答が多かった中、代替大会実施へ向けて具体的に動きだしている競技もあった。
 バレーボールは8月の「県協会長杯」の7月前倒し開催を検討している。本来は1、2年生対象の大会だが、今年は全学年にする方向で調整中。これ以外の案も同時に協議している。
 陸上は例年7月開催の「県高校選手権」を代替大会として考えている。参加者を3年生に絞り、リレー以外のトラック種目はタイムレースで実施。可能な限り日帰り参加できるようにする。奥浦大専門委員長は「陸上は記録が残ることが大事。公認大会をつくってあげたい」と前向きだ。
 「7月の国体県予選を集大成の場に」とする重量挙げのように、他大会を代替にしたり、地区別や3年生だけの「大会」を模索している競技もある。近隣校同士やチーム内で保護者を招いた「引退試合」「引退発表会」を考えているところもある。
 一方で「練習不足が大けがに直結する」「会場を確保できない」などの理由から、方向性を決めかねている競技もある。確かに激しい接触を伴う競技などは準備期間が必要で、やる側の選手たちにとっては残念かもしれないが、させる側の「すぐに試合を設定するのは困難。日程を決められないまま、3年生を引っ張るのも申し訳ない」という声も否定できない。
 結果、全競技が代替大会を実現できるとは限らない。ただ「やってきたことは今後の財産になる」と頭では理解していても、区切りをつけられていないという選手が多いのも事実だ。そんな3年生に「このスポーツをやってきて良かった」と実感してもらうために-。スポーツ関係者の早めの「最善策実行」が期待される。


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