豪州SC:eシリーズ最終戦はSVGが制し、初代『Supercars All-Stars Eseries』王者に

 最終戦を迎えたVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのeスポーツ・シリーズ『Supercars All Stars Eseries』第10戦が6月10日(水)に開催され、2016年VASC王者で“バーチャル・マイスター”と化したSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)がこの夜最初のレースを制し、初代eシリーズチャンピオンの称号を手にした。

 現在VASCシリーズ連覇中のディフェンディングチャンピオン、スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)との直接対決構図でタイトル決戦に臨んだSVGは、現実世界で2年連続ランキング2位に終わった雪辱を晴らすべく、この仮想空間での圧倒的強さを誇示したまま幸先よく8度目のポールポジションを獲得した。

 この日最初のレースの舞台となったシドニー南西部に位置する1962年創設のオランパーク・レースウェイは、すでに施設が撤去され消滅したサーキットではあるものの、SVGにとっては“Team Kiwi Racing”で2007年にシリーズデビューを果たした思い出の地でもあり、仮想空間のターン1に向けて盤石のホールショットを決めていく。

 すると4番グリッドにつけていたワイルドカード枠の元V8ツーリングドライバー、ハーレイ・ハーバー(ホールデン・コモドアZB/Matt Stone Racing)が後続からプッシングを受けたのを皮切りに、マルチカー・クラッシュのアクシデントが発生。

 これで楽になったSVGは27周で2度のピット義務が課されたレースを危なげなく走破し、最終ラップでテール・トゥ・ノーズまで追いすがったeシリーズでの宿敵アントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)の猛追も振り切って14勝目をマーク。

 表彰台圏外の4位に終わったマクラフランに対し108ポイント差をつけ、続くオーストラリアン・モータースポーツの聖地バサーストでの最終レースで5位に入れば、無条件でタイトルを手にする有利な環境を整えた。

 続く最終レース、マウントパノラマに向けてこの夜最初のセッションとして開催された予選では、こちらもワイルドカード枠の若手ドライバーが活躍を演じ、ポールポジションにはSuper2シリーズリーダーでもある22歳のブロディ・コステッキ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)がつけ、『ARG eSports Cup』でも勝利を挙げているハーバーが並ぶフロントロウに。タイトル候補SVGは4番手、マクラフランは7番手からのレースとなった。

この夜の初戦となった1962年創設のオランパーク・レースウェイでの勝負を制したSVGが、タイトルに王手を掛ける
第3戦のバサーストにもエントリーした22歳のブロディ・コステッキ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)がマウントパノラマでの予選最速を記録した
ハーレイ・ハーバー(ホールデン・コモドアZB/Matt Stone Racing)も両戦で先頭集団に絡む活躍を演じて見せた

 そのオープニングラップでもGriffins Bendでウィル・デイビソン(フォード・マスタング/23Red Racing)やブライス・フルウッド(ホールデン・コモドアZB/Mobil 1 Middy’s Racing)らのマシンが大破するクラッシュが発生するも、先頭集団は影響を受けずHell Cornerでハーバーが首位に浮上。そのまま隊列を率いてレースペースを作っていく。

 すると2番手コステッキと7番手スタートのマクラフランが3周目にアンダーカットに向かったところ、DJR Team Penskeのマスタング17号車はピットエントリーアウト側のタイヤバリアに激突するまさかの事態で大幅タイムロス。上位浮上のチャンスを棒に振るかたちとなってしまう。

 続く4周目には2番手ハーバーと3番手パスカーレがピットへと入り、首位コステッキを含めて実質首位争いを展開するトップ3を形成すると、ハーバーが6周目のGriffins Bendでコステッキのインサイドにダイブ。

 わずかにリヤをロックさせながらなんとかコントロールしたハーバーだが、ラインを被せたコステッキが接触し、YUASA Erebusのホールデン56号車はアウト側に弾かれワイドに。しかしこのバトルにお咎めはなく、ハーバー、パスカーレがそのままインをすり抜けていく。

 この間にピットを済ませたSVGがこの首位争いに加わり、各車2度目のルーティンも終えて3番手追走を開始していた13周目。ファイナルラップを目前にしてそのタイトル候補にもアクシデントが発生する。

 山降りのテクニカルセクションForrest’s Elbowでブレーキングを遅らせたSVGは、前を行くパスカーレの左リヤに接触。前荷重のErbusホールデンはたまらずスピンを喫し、イン側のウォールにノーズを擦り付けた状態でストップする。

 このバトルのペナルティ裁定を回避したいSVGもスローダウンしパスカーレの復帰を待つが、バックギアを使用しての脱出となり、その間にコステッキやチャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB/Walkinshaw Andretti United)に先行されるなどポジションを失う結果となってしまう。

 それでもパスカーレを前に出して走行を再開したSVGは、続くファイナルラップを走破して勝者ハーバー、2位コステッキ、3位モスタート、そしてパスカーレに続く5位でチェッカー。マクラフランはこの周にダメージのためマシンを止めたこともあり、SVGがドラマに見舞われながらも『Supercars All Stars Eseries』初代チャンピオンを獲得する結末となった。

ファイナルラップ目前で、eシリーズの宿敵同士がタイトルの行方に影響しかねないまさかのアクシデント
敗れたスコット・マクラフランだが「シリーズを通じてSVGには及ばなかったが、これで現実の3連覇に集中できる」と、すでにスイッチを切り替え済み
フィニッシュ後の1コーナーではSVGを祝福し、通過するほぼ全ドライバーがドーナツを披露した

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