「内面にある愛を表現」 被爆者・谷口稜曄さんの肖像画 タイピント画廊で28日まで展示

被爆75年の節目に合わせ谷口さんの肖像画(左)を描いた石田さん=長崎市樺島町、タイピント画廊

 長崎市の被爆2世の日本画家、石田智さん(59)が、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)会長などを務め、焼けただれた自身の背中の写真を掲げ核廃絶を訴えた被爆者の故谷口稜曄(すみてる)さん(2017年に88歳で死去)の肖像画を描いた。作品は同市樺島町のタイピント画廊で開催中の個展で展示している。28日まで。
 石田さんの父は、長崎原爆の爆心地から約1.2キロの学徒動員先の三菱兵器製作所大橋工場で、事務処理をしていた時に被爆し、両肘や頭頂部などを負傷。2002年に髄膜腫が原因で亡くなった。
 花や風景などを描いていた石田さんは被爆2世ということもあり、10年ほど前から原爆をテーマにした作品も手掛けるようになった。これまでに父や長崎の被爆詩人、故福田須磨子さんらの肖像画を制作した。
 今回は75年の節目に合わせ、3年ほど前から構想していた谷口さんの絵画に取り組んだ。谷口さんとは面識がなかったが、数枚の写真を基に自身のイメージを加えながら、上半身裸の谷口さんが裸の赤ちゃんを優しく抱きかかえる様子を描いた。石田さんは「命の大切さを訴えてきた谷口さんの傷ではなく、内面にある愛を、赤ちゃんと一緒に表現した。見る人の希望につながる絵になればうれしい」と話した。

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