新幹線問題インタビュー 国交省幹線鉄道課長 足立基成氏 佐賀との協議 精力的に

「佐賀との協議を精力的に進めていきたい」と話す足立課長=国土交通省

 九州新幹線長崎ルートの未着工区間(新鳥栖-武雄温泉)の整備方式に関し、佐賀県と協議している国土交通省の足立基成幹線鉄道課長が25日、長崎新聞社のインタビューに応じた。提案した環境影響評価(アセスメント)が佐賀県の同意を得られず手続きに入れないなど手詰まり状態が続くが、議論を前に進めるため今後も精力的に協議を進めたい考えを示した。

 -環境アセスの実施を拒否され続けている。
 今回の提案の意図は、五つの整備方式のいずれにも対応可能なアセスの手続きを進め、その間に佐賀県が求める腰を据えた協議が可能となると考えたから。佐賀県にとってメリットがある提案のはず。今後の協議でも理解を求めていきたい。

 -アセスができない現状では想定する2023年度着工は間に合わないのか。
 今後、アセスの手続きが順調にできないと着工は難しい。

 -その場合、どれくらい着工が遅れるのか。与党の財源論議に間に合わなければ、財源は整備中の北陸新幹線に持って行かれるのか。
 北陸の関係者からは、敦賀開業後に切れ目なく敦賀-新大阪に着工したいとの声がある。財源の議論は過去の例では新規着工の前年度に行われる。この議論は政治エネルギーが必要であり、これまでの整備新幹線の歴史では複数路線を一緒に議論してきた。具体的な年数を言うのは難しいが、仮に北陸と一体で財源の検討ができない場合、取り残される恐れはある。

 -高速鉄道網を長崎-博多に張る必要性と佐賀県にもたらされる効果は何か。
 新幹線は地域間の移動時間を大幅に短縮し、駅やその周辺地域の開発を促進する。経済活動や国民生活の向上に極めて大きな効果をもたらし、災害に強いインフラだ。西九州(長崎)ルートも利便性の高い新幹線ネットワークとしてしっかりつなぐことが重要で、鹿児島ルート開業時もそうであったように、佐賀県にとっても交流人口拡大などのメリットがあると考えている。

 -整備方式のスーパー特急などは非現実的ではないのか。
 スーパー特急の場合、武雄温泉-長崎間の開業効果が得られない。(敷設済みのフル規格の軌道から)狭い軌道に整備し直す大きな追加コストも生じる。武雄温泉駅での新幹線と在来線特急の対面乗り換えと比べて時間短縮効果が見込まれないなどのデメリットもある。

 -現時点で国が取り得る最善策は何か。
 6月に佐賀県と幅広い協議が始まった。引き続き五つの整備方式に関する議論を精力的に進めたい。

 -フル規格を求める長崎県は何をしたらいいのか。
 まずは武雄温泉-長崎の開業効果を最大限発揮するための取り組みを進めてほしい。西九州ルートは佐賀県だけの問題ではない。西日本地域の未来のため、中国地方や関西地方との連携も念頭に置きつつ、佐賀県やJR九州、経済界などと一体となって、新幹線ネットワークと在来線を活用した九州全域の地域振興の具体的な議論を喚起していただければと期待している。

 -JR九州は並行在来線の経営分離問題で踏み込んだ対応をするべきではないのか。
 地域と鉄道は共生するものであるため、まずは地元の方々と鉄道事業者で地元ニーズを踏まえた整備の在り方を十分検討する必要があると思う。並行在来線を含む在来線の維持や、そのサービス水準については、これまで相当程度の配慮が行われている。JR佐世保線などへの影響について心配があるのであれば、今後、関係者間の協議の検討テーマになり得るものと認識している。

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