長崎県内のほぼ全域を風速25メートル以上の暴風域に巻き込んだ台風9号。離島では暴風と高波で家屋倒壊などの被害が相次ぎ、住民らは3日、後片付けや修繕に追われた。汗を拭いながらの作業。現場を見詰め、今週末に接近が予想される台風10号への不安を募らせた。
対馬市の避難所、市立南小(同市豊玉町唐洲)体育館では3日未明、屋根が強風ではがれ、フロアが雨漏りした。避難していた地元の漁業、松原工(たくみ)さん(77)、トミエさん(69)夫婦は体育館内の倉庫に身を寄せた。工さんは「屋根がはがれた後、停電も起きて生きた心地がしなかった。高齢者が多い地域だが、また台風10号が来たらどこに逃げたらいいのか」と途方に暮れた表情で語った。
五島市では2日夜から3日未明にかけ、木造の住居や倉庫などが相次いで倒壊。瓦や外壁が飛ばされた店舗や民家も多かった。
同市堤町では木造平屋の住居1棟が倒壊。1人暮らしの無職男性(68)は、事前に近くに避難して無事だった。男性は「2日午後8時ごろから、風で家が大きく揺れ出したので避難した。逃げていてよかった」と緊迫した状況を語った。
同市玉之浦町玉之浦では、海に面した空き家の壁などが大きく損壊した。近隣住民によると10年以上空き家のまま放置されていた。隣に住む男性(68)は「台風10号も近づいているので、周りの家に被害が出ないよう早く撤去してほしい」と不安げに話した。 台風接近と大潮が重なり、2日夜の満潮時には海面が上昇。長崎市神浦夏井町の国道には、消波ブロックを越えて波が押し寄せ、がれきや発泡スチロールといった海の漂流物が残された。国道は約500メートルにわたり一時全面通行止めとなった。
道路沿いの民家敷地にもごみが流れ込んだ。片付けを手伝っていた同町の平尾俊昭さん(68)は「波が上がり、排水溝が詰まって辺りは池のようになっていた。高齢者の1人暮らしも多いので困る」と漏らした。
各地で停電が発生。最大で総戸数の7割が停電した西海市では、スーパーやコンビニ、飲食店が朝から臨時休業に追い込まれた。同市西彼町のスーパーウエスト本店は、解けた冷凍食品やアイスクリームを破棄。スタッフの男性(40)は「自然災害なのでどうしようもない」とつぶやいた。