センバツ、ダブル出場へ 長崎県勢の挑戦<下> 可能性「十分にある」 得点力上げ悲願達成を

来春の甲子園出場へ向けて19日に幕を開ける県大会の組み合わせ抽選会。2枠の九州大会出場権をつかむのはどのチームか=大村市、シーハットおおむら

 近年の秋の勢力図は混沌(こんとん)としており、過去5年間の長崎県大会は毎年優勝校が違う。準優勝校を含めて九州大会に臨んだ計10校には、海星、長崎総合科学大付、長崎日大、長崎東、創成館、長崎商、長崎南山、大崎と8校が名を連ねる。
 「県内で絶対的な力がないと九州や全国では勝てない」との指摘もあるが、元来、野球は番狂わせが起こりやすい競技。各監督が「新チーム初期は予期せぬことが突然出てくる」「未完成ながら何とかする面白さがある」と話すように、特に秋は、県勢が未経験の「21世紀枠」も考えると、多くの学校にセンバツ出場へのチャンスがある。
 今季も、秋の前哨戦となる8月の長崎、中、佐世保各地区新人大会で優勝、準優勝した計6校中、私立は創成館の1校。半数は甲子園を経験したことがない。この6校をシードした上で、いよいよ今月19日から春の全国切符獲得を目指した県大会が幕を開ける。
 大きな焦点は、各地区新人大会を制した「第1シード」の長崎商、創成館、大崎を他校が止められるかどうか。大崎は昨年の新人大会から1年間、県内公式戦無敗を継続中。創成館は県勢で近年最も結果を出しているチームの一つで、長崎商は昨秋と今夏、その両校とそれぞれ0-1の紙一重の勝負を演じている。
 ほかにも、夏の県大会準Vで佐世保地区新人大会も大崎に4-5と健闘した鹿町工、夏の創成館撃破に続いて長崎地区新人大会で海星を倒した長崎西、中地区新人大会で長崎日大などを下した大村工など、楽しみなチームは多い。公立校の躍進に期待がかかる一方で、シードを逃した私立校の奮起も県の底上げには不可欠だ。
 ここで、勝負のポイントとなってくるのが、全県的な課題となっている得点力。要素は無数にあるが、多くの監督が「打たないと九州、全国で勝てない」と同様の言葉を口にする。かつて「秋や春は守備」とされたが、今やそれは“前提”で「秋や春も打力が必要」な時代になった。相手の攻撃を上回る守備を追求した上で「点を取られても取り返せそう」という雰囲気や力を備えているかが問われてくる。
 コロナ禍で暗い話題が続く今年。3年生たちの悔しい思いも胸に白熱の県大会を繰り広げ、地元開催の九州大会へ勢いをつける。そして、悲願の県勢センバツダブル出場を成し遂げることができれば、どれだけ盛り上がるだろうか。昨秋の九州4強、創成館の稙田龍生監督はこう力を込める。
 「長崎には、その可能性が十分にある」

 


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