異例の初回での捕手交代 DeNAラミレス監督、嶺井起用と“非情采配“の意図は?

DeNAのアレックス・ラミレス監督【写真:荒川祐史】

先発の坂本が初回に4失点すると、2回から嶺井に代えて戸柱を起用

■DeNA 7-7 阪神(8日・横浜)

DeNAは8日、横浜スタジアムで行われた阪神戦に7-7で引き分けた。7点ビハインドから1イニング7得点の猛攻で引き分けに持ち込んだラミレス監督は「非常に大きい試合」と胸を張ったが、今季何かと物議を醸すことの多い采配面でこの日も思い切った選手起用があった。

阪神と0.5ゲーム差で迎えた初戦。先発は6月25日以来の1軍登板となったドラフト2位ルーキーの坂本だった。プロ初登板、初先発、初勝利を記録したその試合では、戸柱とのバッテリーだったが、この日のスタメンは嶺井だった。試合前のリモート会見で指揮官は「今日の相手はガルシアで、嶺井の打撃面に期待してスタメンに入れる。配球面では、戸柱とそんなに変わることはないと思うので」と、起用の意図を説明していた。

だが、初回に坂本が先頭打者から連続安打を許すなど、満塁のピンチを招くと、大山にグランドスラムを浴びていきなり4失点を喫した。そして、2回の阪神の攻撃前だ。捕手が嶺井から戸柱に交代。指揮官が「打撃に期待」した嶺井は、一度も打席に立つことなく、ベンチに下がることになった。

坂本は2回を3者凡退に抑え、3回も簡単に二死を取った。捕手交代が功を奏したかとも思われたが、サンズに安打を打たれた後に、大山に2打席連続となる2ランを浴びた。5回にも先頭打者のサンズにソロを被弾し、坂本は5回7失点で降板した。ラミレス監督は「残念な結果になったが、ポジティブな要素もたくさんあった。次のチャンスはまたすぐに来ると思う」と左腕を責めなかったが、デビュー戦で見せた輝きからは程遠い投球となった。

捕手交代について問われたラミレス監督「相手に流れがいってしまったので、その流れを止めたいと思った」

試合後、わずか1イニングでの捕手交代について問われた指揮官は「初回に4点を取られて相手に流れがいってしまったので、その流れを止めたいと思った。そこから戸柱はよくやってくれたと思う」と説明したが、嶺井に関して言及することはなかった

坂本の後を継いだ山崎康が6回を3者凡退に抑え、その裏には一挙7得点の猛攻と、確かに試合の流れは変わった。しかし、敗色濃厚だった試合を最終的に引き分けに持ち込んだのは、無失点に抑えたリリーフ陣の頑張りと打線の奮起によるところが大きく、捕手交代によるものとは言い難いのではないか。

ラミレス監督は常々「野球は流れのスポーツ」ということを口にする。この日の結果も「それも野球」ということかもしれないが、異例とも言える初回での捕手交代は劇薬になりかねない。

試合展開で言えば、勝ちにも等しい引き分けと思える結果に、試合後のラミレス監督は満足そうな表情も見せた。しかし、逆に言えば奇跡的とも言える攻撃を終盤の逆転劇につなげられなかったとも言える。何より、首位を独走する巨人がこの日も順当に勝ち星を積み上げた中で、2位を争う両チームが引き分けで足踏みというのは、クライマックスシリーズが行われない今季の状況を考えると、致命的とも思える。

この日の引き分けは本当に“価値ある”ものだったのか、通常ではない選手交代は“英断”だったのか。その答えは、今後の戦いぶりにかかることになる。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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