ペット・ショップ・ボーイズ、ダスティ・スプリングフィールドとの共演シングル! 1988年 2月27日 ペット・ショップ・ボーイズのシングル「とどかぬ想い」がビルボードHOT100で最高位(2位)を記録した日

共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.73
What Have I Done To Deserve This? / Pet Shop Boys

UKダンスミュージック界の雄、ペット・ショップ・ボーイズ

80年代におけるイギリス出身の “ダンスミュージック界の雄”といえば、ペット・ショップ・ボーイズ(以下PSB)とニュー・オーダーが双璧ともいえる存在であった(もうひとつ挙げるならば、デペッシュ・モードか)。

80年代のビルボード・ダンス・チャート上において、このふたつのグループの実績はほぼ同等ではあったが、いわゆる一般的チャート “HOT100” においてはPSBが圧勝といっていい実績を誇る。ニュー・オーダーがトップ40ヒットを1曲のみ残すのに比して、PSBはトップ40ヒット6曲(うち5曲がトップ10!)を残す。ニュー・オーダーはアンダーグラウンドなカルト人気を博す一方で、PSBはオーバーグラウンドなポップ・マーケット人気を獲得していたということだ。

もちろん90年代以降もダンスミュージック・シーンではトップ集団をひた走っていたPSBだが、こと80年代後半に限っていえば、ジョージ・マイケルやリック・アストリーら、はたまたリチャード・マークスやボン・ジョヴィ等とチャート上位の鎬を削り合う、80年代洋楽を代表するアーティストのひとつとして、シーンに君臨していたのだ。

ダスティ・スプリングフィールドとのデュエット「とどかぬ思い」

そんなPSBの80年代ヒット・レパートリーの中で共有感の高い作品といえば、初のワールドワイド・ヒットにして唯一の全米ナンバーワン「ウエスト・エンド・ガールズ」(1986年1位)、LGBTの心の葛藤を描いた「哀しみの天使(It’s A Sin)」(1987年9位)、古くはB・J・トーマス / グウェン・マクレー / ブレンダ・リー、さらに直近(1982年)のウィリー・ネルソンのヒットの素晴らしいカバー「オルウェイズ・オン・マイ・マインド」(1988年4位)あたりが挙げられるだろう。

そして通算4曲目のトップ10ヒットにして、80年代71番目に誕生したナンバー2ソング「とどかぬ思い(What Have I Done To Deserve This?)」(1988年2位)を忘れるわけにはいかない。

PSBにとっては最大ヒット「ウエスト・エンド・ガールズ」に次ぐ大きなヒット規模となった作品で、アーティスト表記はペット・ショップ・ボーイズ&ダスティ・スプリングフィールドとなっている。そう、「とどかぬ思い」は英ベテラン女性シンガー、ダスティ・スプリングフィールドとの共演シングルでもあった。

背景にあったLGBT環境、ゲイ・カルチャーへの理解訴求を真摯に表現

この時点で四半世紀のキャリアを誇るダスティだったが、実はデビュー当初からPSBは彼女への客演ラヴ・コールを送っていたのだとか。特にメンバーのニール・テナントにとっては子供のころからのヒーローだったようで、一度は興味ないと断られていたものの、執念実ってセカンドアルバムのタイミングでデュエット実現の運びとなった。

ダスティにとっても新進ヒットメイカーとの共演は新たな良いイメージづけにもなるという目論見があったのだろうが、PSBの愚直で真摯なリスペクト・憧憬が理想的な結果を生み出したのだ。男女のすれ違いから哲学的愛憎劇を描いた「とどかぬ思い」だったが、PSBからダスティへの愛はしっかりと本人に届いたということですね。

ダスティとの共演はお互いのLGBT環境も背景にあったといわれるが、基本的にPSBの音楽はゲイ・カルチャーへの理解訴求を真摯に真面目に表現していた。90年代日本でも大ヒットしたヴィレッジ・ピープルのカバー「ゴー・ウエスト」(1993年)ひとつとっても、ゲイ・カルチャー、延いては米ディスコ・カルチャー~伝統的ディスコ・ソウルへの愛情・憧憬・敬意・継承にあふれている。「とどかぬ思い」を筆頭に、彼らの音楽は実に真摯なのだ。そう意識してPSBのレパートリーに接すれば、新しい魅力を発見できるに違いない。

※ KARL南澤の連載「共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味」
ジャンル、洋邦、老若男女を問わないヒットソングにある ‟共有感”。米ビルボードのチャートがほぼそのまま日本における洋楽ヒットだった80年代。ナンバーワンヒットにも負けず劣らずの魅力と共有感が満載の時代に生まれたビルボードHOT100 2位ソングを紐解く大好評連載。

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etc.

カタリベ: KARL南澤

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