成功するディーラーの性格とは?「株式と結婚するな」という格言から学ぶこと

ようやく蝉の声もしなくなり、突然の安倍首相退陣のニュースでも大きな混乱はなく、菅新首相が誕生しました。株式市場では米国のハイテク銘柄の下落が大きくなっていますが、日本市場では日経平均が高値を試すような動きになっています。堅調な相場が続いていますが、本当に楽観視していてもいいのでしょうか?


株式投資をめぐる様々な格言

株式市場では様々な「相場格言」と言われるものが見られます。それらは表裏一体で、同じ行動でも肯定する格言もあれば、否定する格言もあります。

よく言われる格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」という言葉があるます。これは、もうと思えばまだであり、まだと思えばもうなのですから、いったいどっちなんだ!という感じです。

ただ、投資で失敗しないためには相場格言なども諫言として覚えておくといいと思います。都合のいいように解釈してもいいので、自分の失敗を省みる材料としたり、二度と失敗をしないために覚えておいたりしても損はありません。

もちろん、投資する金額や期間などの違いから、同じ相場格言でも通用する場合もあれば、しない場合もあり、様々です。その格言通りに動くのではなく、相場状況を見て自分なりに解釈し、戒めとして使うということでも良いと思います。

「株式と結婚するな」

「株式と結婚するな」という格言があります。「銘柄に惚れるな」というものもあるのですが、いずれにしても一つ二つの銘柄に「入れ込むな」ということです。

株式投資を始める時に「好きな銘柄を買えば良い」と言われるのですが、好きな銘柄を買うにも関わらず、結婚してはいけなくて、惚れてもいけないことになってしまいます。
著名な投資家でウォーレン・バフェットという人がいます。この人の投資方法は、良いと思った会社の株は半永久的に保有するというものです。つまり、株式と結婚してしまっているわけです。

彼のやり方もまた一理ありますが、一般的な投資家ということで言えば、やはり惚れ込んではいけないと思っていた方が良いと思います。それに、バフェット氏も絶対に売らないということではなく、自分が思っていた通りではないとあっさりと見切ってしまうこともあるのです。

「あばたもえくぼ」「恋は盲目」ではないですが、投資の世界でも良いと思った銘柄を購入した後、どんな悪い話や数字が出てきても、「悪いままではないはずだ」と何の根拠もなく保有を続けてしまう場合があります。

また、どんなことをしても「会社のためなのだ」と見てしまう場合もあるのです。どこかで見切らなければいけないとこを見切り切れず、結局は惚れた銘柄が破たんしてしまうまで保有を続けてしまったということすらあります。

成功するディーラーは非情に振る舞う

そして往々にして、ここまで酷いと思わなかったとして見切ったところが底値となってしまうということが起きます。現実に目をつぶり、「これは良い銘柄だから」とか「人気のある経営者だから」と思い込まず、ドライに考えて見切るということが必要です。

株式の売買を職業としている証券会社のディーラーの中でも、本当に優秀で利益を出しているのは、いい意味でドライな人が多いです。朝令暮改を平気で行えないと優秀なディーラーにはなり得ません。

また、そうした人は自分に対しても冷静です。例えば、「良い銘柄だから100円以下に株価が下落することはない」と思っていても、いざ100円を割り込んだ場合、優秀なディーラーはあっさりと売ってしまいます。対して、失敗するディーラーは「こんないい銘柄が100円を割り込むことはおかしい!」として持ち続け、結局50円以下になってしまうということもあるのです。

そこは非情になり、「好きな銘柄だけど悪い数字が出たから」ということであっさりと見切ることが必要です。筆者も昔、思い込みで大きな失敗をしたことがあります。

NTT株での大きな失敗

NTT(9432)が上場した時の話ですが、上場前の売り出し(公募)価格が119万7千円で、上場時に160万円からはじまってドンドン上昇が続きました。こうなると、よくある話なのですが、当初は「200万円くらいが高値だろう」とか考えていても、いざ200万円を超えると、「さあ300万円だ」となりました。

「300万円くらいがいいところだろう」と考えていました。でも、何度も買っても上昇するものだから、「下がらないということは、いい銘柄だから一生ついて行く」と思い込んでしまい、300万円を超えても買い続けてしまったのです。

その後、318万円をつけてついに下がり始めても、「良い銘柄だから」という理由で300万円を割り込んでも売れず、逆に買い増す始末でした。結局、200万円も割り込んで、大きな損失を抱えたままに売るに売れずという状況になってしまったのです。

市場は古今東西同じ

「株式と結婚するな」という格言通り、あっさりと見切っていれば、こうはならなかったと大反省しました。相場格言というのは、江戸時代の米相場の時代から続いているものなどもあります。また、米国の格言でも日本と同じようなものが見られます。古今東西、相場というものは同じであり、これらの格言は今でも十分通用するものも多いです。

もちろん、相場は常に変化しているので、相場格言の解釈も変化が必要です。しかし、「株式と結婚するな」という言葉は、相場では常に冷静で客観的でなければいけないということの戒めとして、覚えておけば失敗も少なくなると思います。

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