「#東京脱出」の影響は?「利益の出やすい市区町村」をネットで見つける方法

不動産投資で、場所選びは大事なポイントの1つ。建物に不備があったとしても、修理すればカバーできるかもしれません。しかし、不動産は文字通り、動かせません。場所選びで誤ると、不動産投資は致命的ダメージを受けがちなのです。では、このコロナ時代に東京周辺はまだ魅力的な投資エリアなのでしょうか? また、投資エリアを決めるに際し、「どの地域に人が多く存在し、今後の人口推移を考慮しながら、物件を購入しても問題ないエリア」と判断すればよいのでしょうか? 税理士大家の石井彰男が解説します。


「#東京脱出」の都内人口への影響

まずは、全体を把握するために、都道府県ごとの将来人口推計を「ニッセイ基礎研究所」のホームページから見てみましょう。2045年の推計人口は以下になりました。数字は対2015年のパーセント比率になります。

1位 東京 100.7
2位 沖縄 99.6
3位 愛知 92.2
4位 神奈川 91.1
5位 埼玉 89.8
6位 滋賀 89.4
7位 福岡 89.3
8位 千葉 87.8
9位 広島 85.4
10位 岡山 84.3
11位 全国 83.7

このように、東京と沖縄の人口は2045年でもほとんど変わらず推移していくということです。全国平均の減少率よりも上に位置する地域で投資をした方が成功する可能性が高くなりますから、1位から10位の間で選んだ方が良さそうだということが容易に判断できます。

特に、「2045年でも人口が増加しているのは東京都のみである」ということがデータから確認できました

では、今のコロナウイルス状況下でも、東京独り勝ちという人口推移が継続できているのでしょうか? 総務省統計局の「東京都の転入超過数の推移(2013年7月〜2020年7月)」を調べると、以下のような結果になりました。

コロナウイルス状況下における東京都の2020年5月の人口はマイナス1069人、7月においてはマイナス2522人という結果が出ています。つまり、5月と7月においては、東京都の人口が約1000万人だとすると、僅かながら減少したということになります。これは、他県からの流入数が急減したからだと、報告書内で記載されています。

では、「#東京脱出」がSNSで流行しましたが、こういった流れは今後も続くのでしょうか? コロナウイルス状況下においては、しばらく継続するかもしれませんが、「今までの東京一極集中という流れが大きく覆ることはなく、一旦落ち着けば、東京への流入数は再び元に戻る」と、私は考えています。

なぜなら、コロナウイルスが原因で、「街そのものの魅力がなくなってしまうわけではないから」です。

3ステップのスクリーニング法

それではコロナウイルス状況下における東京の人口推移が確認できたところで、次に、エリアの選定について、もう少し具体的なやり方をお話したいと思います

わたしが必ず確認するのが、「国立社会保障・人口問題研究所」で公表されている、市区町村ごとの人口推移です。今だと、2045年までの将来予測が出ています。これを使えば、市区町村ごとの投資の可否をマクロで判断できます。

例えば、東京都中央区を見てみると、人口問題研究所の将来予測では、2015年を100とした場合、2045年は134.9となっており、著しく人口増加することが見込まれています。
同じ期間内での東京都全体での増加率は、0.7%ですから、平均を大きく上回る増加率だと判断できます。他にも、住みたい街として人気の目黒区は、8.2%の増加となっています

ちなみに、これを地図上にわかりやすく示したものが、地域経済分析システム「RESAS」です。同サイトでは、人口予想が赤(人口増加エリア)から青(人口減少エリア)までグラデーションで表現され、人口の増減が視覚的にわかります。

「国立社会保障・人口問題研究所」と「RESAS」、この2つを使って「今現在どこに人が多いのか」、「今後の人口推移はどのように変化していくのか」を明らかしていきます。

次に、地域ごとの空室率を知る必要があります。人口が増加する地域だったとしても、空室率が高い地域であれば、「需要と供給が合っていない」かもしれないからです。

それを判断できる便利なサイトが、LIFULL HOME'Sの「見える賃貸経営」です。このサイトは、空室率だけでなく、エリアの平均想定利回りや家賃相場が載っているので、とても便利です。

今回は、東京都の賃貸用住宅の空室率を見てみましょう。先ほど検討した、人口増加率34.9%の中央区の空室率は、27.7%になっています。東京都全体の平均空室率が今現在で14.5%となっているため、約2倍の空室率であると判断できます。
一方、目黒区の空室率は28.2%ですから、こちらも高い空室率だと判断できます。

ではもし、この2つの地域で不動産投資を検討する場合、どちらに優位性があると考えるべきでしょうか?

「将来の人口増加率は高いのに、空室率が低い地域」を狙う

今回の場合、どちらかと言えば、中央区の方に優位性があるのではないでしょうか。なぜなら、空室率は同程度ですが、今後の人口増加率が高いのは、中央区であるためです。同サイトによると、地域の平均利回りは、どちらも5%でした

このようにデータを見ていくと、「将来の人口増加率は高いのに、空室率が低い地域」というのを自分の目で見つけていくことができます。

このエリア分析はとても簡単。そして、少し使いなれれば、初心者でもスピーディにできるでしょう。実際、「○○県の△△市は利益の出やすいエリアか」と聞かれたら、私なら5分で判断できます。

1. 今現在どこに人が多いのか
2. 今後の人口推移はどのように変化していくのか
3. 空室率はどの程度か

の3ステップを踏んで、「利益の出やすいエリア」を見つけましょう。それが、成功する不動産投資の小さな、そして大きな第一歩になります。

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