今すぐできる、「伝える力」がみるみる上がる3つのポイント

リモートワークなど多様な働き方が広まるなか、さまざまなツールを介しても、きちんと伝えられるコミュニケーション力が求められています。

日本IBMや日本マイクロソフトで役員を務め、現在は様々な企業の取締役として経営アドバイスを行う佐々木順子さんは、コミュニケーションは「努力しだいで上達することができる」といいます。

具体的にどのようなことを心がけたらよいのでしょうか。著書『「あなたにお願いしたい」と言われる仕事のコツ88』(ぱる出版)から一部抜粋して紹介します。


ロジカルにはロジカルを、情熱には情熱を

コミュニケーションは技術・スキルです。決して資質の問題ではありません。努力しだいで上達することができますので、生まれながらのコミュニケーション下手、ということは絶対にありません。

メッセージを伝えたい相手に、いかに効果的かつ確実に伝えるか。それがコミュニケーションのスキルです。なお、実際には、「伝える」と「伝わる」は別ものです。伝えたかどうかではなく、伝わったかどうかだけが問題となります。

伝わるかどうかは、伝えるためにどれだけ努力をしたかにかかっていますから、伝わらなければあなたの努力不足ということになります。では、「伝わる」コミュニケーションのためには、どんな努力をすればいいのでしょうか。

私の観察では、人は人を説得する方法で説得されやすい傾向があるようです。徹底的にロジカルに説得してくる人には、ロジカルに対応する。情熱的に訴える人にはこちらも感情をこめて説得する。

こんなふうに、相手のキャラクターを見極めて、コミュニケーションの手段や方法を検討する練習が必要です。ただし、練習を重ねてスキルがあがっても、決して独りよがりにならず、伝わったかどうかをその都度相手に確認しましょう。

あまりにも話すことに一生懸命になってしまうと、相手の反応に気がつかないこともあります。途中で、「ここまで大丈夫ですか」とか、「いままでのところでわからないところはありませんか」などと、適切なタイミングで確認をはさんだり、話しながら相手のボディランゲージを読み取ったりすることも大切です。

きめ細かく相手の反応を見ながら伝えるのも、コミュニケーションの技術の一つ。コミュニケーションはとても奥深いものです。よりよいコミュニケーションのために、練習を重ねていきましょう。

相手と情報レベルや言葉をそろえる

コミュニケーションにおいては、相手と情報を共有する必要があります。そのために、相手と「そろえて」おくべきことを二つ、お伝えしたいと思います。

1点目として、「相手との情報レベルをそろえる」こと。上司に報告をする際にも、本題に入る前に、その話題の前提となる背景や状況などについて、ひとこと説明を加えます。

「この件は、こういう状況が背景にありますのでこうなっていましたが、じつは…」などと説明しておくと、上司がたとえ知っている情報であっても、スムーズに記憶を呼び戻すことができ、すんなりと本題を理解することができます。

自分がいま考えていることを、上司も考えているとは限りません。自分にはタイムリーな話題でも、上司にとっては遠い記憶の中の話かもしれません。時間短縮のためにも、情報のレベルをそろえるひと手間をかけるようにしましょう。

2点目としては、「相手と言葉をそろえる」ということ。

たとえば、業界用語で「CX」という略語を使うことがあります。少し前までは、「Customer Experience」(顧客が体験する価値)の略として使われていたのですが、最近では、「Corporate Transformation」(企業変革)の略として使われることがあり、お互い違う意味で理解していたということが実際にありました。

ほかにも、「CMS」には「Cash Management System」(企業グループ全体の資金状況を管理するシステム)と、「Contents Management System」(ウェブサイトの制作・管理・更新システム)という二つの意味があるので注意が必要です。

相手の理解を確認しながら進めることはもちろん、あまりにも特殊な用語を使わない、やたらと英語交じりの言葉を使わないということにも気をつけましょう。

自分たちの業界用語よりも、お客様の業界用語を使うようにしてください。たとえば銀行などの金融業界は特殊な用語の多い世界です。「現金」や「現物」という言葉の意味が、お客様によって異なっている場合もあります。

この2点は、相手への想像力の一環です。時間のムダや取引上の事故を防ぐためにも、相手の立場に立って言葉を使うようにしましょう。

文章の最後に肯定文を持ってくる

人間心理として、最後に聞いたことをより強く覚えているものです。これは、心理学用語で「終末効果(親近効果)」と呼ばれ、最後の印象が全体の評価に大きな影響を及ぼすという現象です。したがって、何かを相手に伝えるときには、文章の最後に、もっとも伝えたいことを持ってくるようにしましょう。

次の二つの文章を比べてみてください。

「とても丁寧に修理しますが、少し時間がかかります」
「修理には少し時間がかかりますが、とても丁寧な仕上がりです」

この両者を比較すると、同じことを言っているのに、まったく印象が違うことに気づくはずです。前者では時間がかかるというマイナス要因に意識が向きますが、後者では「仕上がりがいい」というプラスの面をより強く印象づけられるでしょう。

これは簡単でとても有効なテクニックです。ビジネスにももちろん応用できます。

「こちらのプランですと、いまよりもコストは若干かかりますが、売上は10パーセントアップしますよ」
「こちらのプランですと、いまよりも売上は10パーセントアップしますが、コストは若干かかりますよ」

どちらも同じ内容なのに、後者ではコスト増が強く印象に残り、契約することがためらわれます。しかし前者では、売上の伸びが強く印象づけられて、契約してもいいかなという気分になりそうです。

このように、短い会話の中では、自分がいちばん伝えたい内容を最後に持ってくるようにすれば、それだけで説得力がぐっとあがります。

ある程度の長さのスピーチやプレゼンテーションの中であれば、最初と最後はもちろん、ダメ押しにもう一度と、同じことを何度も連呼することで、説得力ある伝え方となるでしょう。

佐々木順子 著(ぱる出版)

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