針や振り子劣化…被爆柱時計のレプリカ作製へ 長崎原爆資料館、来年3月末完成

展示されている柱時計=長崎市、長崎原爆資料館

 長崎原爆資料館(長崎市平野町)の代表的な展示品の一つで、長崎原爆がさく裂した午前11時2分で針が止まった柱時計が、原爆投下から75年が経過し、さび付くなど劣化が進んでいる。長崎市は将来的に展示できなくなる事態に備えてレプリカを製作することにし、柱時計が5日、同資料館から搬出された。レプリカは来年3月に完成予定で、館外に持ち出しにくい本物の代わりに、館外での原爆展などでの活用を図る。
 柱時計は高さ52センチ、幅27センチ、奥行き20センチ。爆心地から約800メートルの山王神社(坂本2丁目)近くの民家で使われていた。1949年に市に寄贈。同資料館の前身である旧市原爆資料館(通称・六角堂)時代から展示され、長崎原爆の実相を伝える資料の一つとして有名だが、被爆から75年が経過し、針や振り子、内部のゼンマイがさび付くなど劣化が著しいという。このためレプリカを作製し、将来に備えることにした。
 レプリカが完成する来年3月末までは、代わりに原寸大の写真パネルを展示。本物については、被爆時の状態から手を加えないよう修繕はせず、レプリカ完成後は引き続き長崎原爆資料館で展示する考えだ。
 同資料館では常設展示室の被爆した衣服が色あせるなど、他の収蔵資料の劣化も進む。弦本美菜子学芸員は「レプリカ作製など、保存に向けてできることは今後もやっていきたい」と話した。

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