B型肝炎ワクチン開発 矢野氏に医学功労者表彰 「先駆者として評価」喜び

医学功労者として表彰された矢野氏=大村市久原2丁目、国立病院機構長崎医療センター

 国立病院機構長崎医療センター名誉院長で長崎県病院企業団企業長を務めた矢野右人(みちたみ)氏(83)がこのほど、1980年代のB型肝炎遺伝子組み換えワクチン開発や発展途上国への普及の功績が認められ、東京の財団から医学功労者として表彰された。
 矢野氏は同センター前身の国立長崎中央病院で肝炎研究に打ち込み、82年から旧厚生省の研究班で化血研(熊本市)開発の新ワクチンの臨床試験の責任者を務めた。国内で初めて遺伝子組み換え技術を応用し、開発資源を心配せず無尽蔵に製造できるのは画期的だったという。
 表彰したのは宮川庚子(かのえこ)記念研究財団で、宮川氏は日本初の女性医学博士。長年にわたり耳鼻科医院を営む傍ら、特に晩年は肝炎などアジアに多い疾患の研究に強い関心を示した。同財団は宮川氏の遺志を継ぎ、研究の推進・助成や学術交流の促進に努めている。
 矢野氏は「B型肝炎ウイルスが確認されてワクチンができるまで約20年かかった。30年以上も前のことを先駆者として評価していただいたのはありがたい」と受賞を喜んだ。
 一方で各国メーカーが開発を急ぐ、B型肝炎ウイルス類似の新型コロナウイルスのワクチンについて「ウイルスの各部位の抗原抗体系の働きが明確になっておらず、(ウイルスの増殖を抑える)中和抗体が体内にできるかどうかが重要」と述べた。

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