台風14号の「予報円」からわかる警戒ポイント 10月は秋雨前線と相乗効果で大雨の恐れ

 5日、日本の南で発生した台風14号の台風進路図を見て「予報円が広い」と気づいた方も多いのではないでしょうか。5日先まで次第に大きく描かれている円は、台風の大きさや強さを表しているのではありません。台風の中心が入る確率がおよそ70%のエリアを示しているのです。つまり、円が大きいほど、進路予想に幅があるということになります。台風の進み方によって、荒天となる地域や期間、雨や風の強さが変わります。台風の動きには注意が必要です。今回は、台風14号とその予報円から分かることを解説しましょう。(日本気象協会=相原恵理子)

 ※台風の最新情報はこちらでご確認ください。日本気象協会tenki.jp「台風情報」(https://tenki.jp/bousai/typhoon/

10月8日12時発表の台風14号予想進路図(出典:日本気象協会)

 ▽進路の要は偏西風

 台風14号は「く」の字を描くように急カーブで東寄りに進む予想になっています。

 台風は周囲の風に流されて移動します。自分で進路を決めて動くことはできません。台風が発生してからどう流されるかを簡単に説明するとこうなります。

 ①初めは東寄りの風に流されるようにして西へ進みます。②ある程度進むと、太平洋高気圧の縁を沿うように吹く北寄りの風に乗って北上します。③日本に近づいてくると、上空の強い西寄りの風すなわち偏西風に乗って東へと向きを変えて進みます。

 この偏西風がどこに位置するかによって、台風が海上を進むのか、上陸して陸地を進むのか変わってきます。秋は偏西風が本州付近まで南下していることもあり、陸地に近い所を進んだり、上陸したりする可能性が高くなります。台風14号が上陸するかどうかも偏西風が要となるのです。

 なお、台風14号は発生直後から動きがゆっくりですが、偏西風に乗ると、速度を上げて進むことが予想されます。

10月8日9時の実況天気図(出典:日本気象協会)

 ▽前線とのダブルパンチ、大雨に警戒!

 台風14号の行く先には秋雨前線が延びています。台風はこの前線を持ち上げるような形で一緒に北上していく見込みです。台風が遠く離れていても、先行して秋雨前線による雨が降り始めます。すでに7日には九州から関東にかけての太平洋側では、前線に伴う雨雲がかかっています。

 台風が北上してくると、その動きに伴って湿った空気の流れ込みが強まります。すると前線は刺激され、活動が活発になります。雨雲は発達し、前線周辺では局地的な大雨となるでしょう。

 そこへ台風が接近することで、大雨がさらに続き、雨量が多くなる恐れがあるのです。

 台風14号は7日15時に「強い」勢力まで発達しました。今後も台風がエネルギーを補充しやすい水温の高い(27度以上)海域を進むため、強い勢力は維持され、または、さらに発達する可能性があります。

 ▽最も危険なコースは?

 強い台風14号は風速25メートル以上の暴風域を伴っています。今後、勢力を維持しながら北上し、9日には、南西諸島から九州付近に接近する見通しです。その後、10日には偏西風に乗って東寄りに進路を取り、11日にかけて、四国や本州へ影響が出ると予想されます。

 仮に予報円の中心を進めば11日にかけて近畿、東海、関東の沿岸部を中心に台風本体の活発な雨雲がかかり、大雨となる可能性があります。

 もし予報円の南側を進めば、台風本体の雨雲は海上が中心となりますが、秋雨前線の雲はかかるため、雨は続く見通しです。

 そして、最も危険な進路とされるのは、予報円の北側を進む場合です。つまり上陸するコースということになります。四国や近畿、東海、関東、東北南部と日本列島を縦断し、台風本体の活発な雨雲が広い範囲にかかる恐れがあります。台風の中心付近では風も強く、大荒れとなるでしょう。

2004年10月の台風23号の大雨で円山川(左)が決壊し、水浸しの住宅=21日、兵庫県豊岡市で共同通信社ヘリから

 ▽10月の台風で大災害の例も

 10月に発生する台風はこれまでに何度も大きな被害を引き起こしています。

 2004年10月13日にマリアナ諸島近海で発生した台風23号は、20日13時ごろに大型の強い勢力で高知県土佐清水市付近に上陸しました。その後、近畿、東海、関東甲信地方を通過して、21日3時に関東地方で温帯低気圧に変わりました。

 暴風域が広く、台風の北側に延びていた(本州付近に停滞していた)秋雨前線の活動が活発になったことで、九州から関東にかけての多くの地点でこれまでの一日当たり降水量の記録を上回る数値を観測しました。四国や九州(大分県)で総雨量が500ミリを超えたほか、20日に京都府舞鶴市で当時の記録を上回る51・9メートルの最大瞬間風速を記録しました。河川の氾濫や土砂災害などにより、全国の死者・行方不明者は100人近くになりました。

 13年の台風26号は10月11日にマリアナ諸島付近で発生し、16日の明け方に伊豆諸島北部を通過、その後、房総半島の東岸をかすめて、16日15時に三陸沖で温帯低気圧に変わりました。

 伊豆大島では台風接近前の16日未明から猛烈な雨が数時間降り続き、24時間の雨量が800ミリを超える記録的な大雨となりました。大規模な土砂災害が発生した伊豆大島では死者が20名以上に。そのほか、大雨や暴風により、中国地方から北海道にかけての広い範囲で住家損壊、土砂災害、浸水害、河川の氾濫等が発生しました。

これまでの2020年の台風進路図(出典:日本気象協会)

 ▽9月まで上陸なしは11年ぶり、11月に上陸も

 今年の台風はいくつも接近はしているものの、いまだ上陸はしていません。9月までに台風が上陸しなかったのは09年以来、11年ぶりのこととなりました。

 とはいっても10月に入っても台風シーズンは続くため、油断はできません。台風の平年の発生数は10月が3・6個、11月は2・3個です。昨年10月12日19時前に伊豆半島に上陸した台風19号の被害は甚大でした。東海から東北にかけての1都12県に大雨特別警報が発表され、複数の河川が氾濫、土砂災害、浸水害が発生しました。

 過去、最も遅く上陸した台風は1990年11月30日です。南の海上の水温は27度以上あり、依然として台風の発生も発達もしやすい状況にあります。今後も台風情報には十分注意してください。

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