メクル第493号 不思議がいっぱい カエルの色 幸せを運ぶ? 西海で発見「青ちゃん」

 日本でカエルといえば、緑色のニホンアマガエルを思い浮(う)かべる人が多いのではないでしょうか。でもこのカエル、実は青、黄、灰(はい)、茶色もいるんです! 不思議がいっぱいの体色の仕組みについて、カエルの研究を長年続けて“カエル先生”と呼ばれる長崎女子短大幼児(ようじ)教育学科の松尾公則教授(まつおたかのりきょうじゅ)(69)に教えてもらいました。

 4月29日、西海市大瀬戸(おおせと)町の松島にある民家で、きれいな青色のニホンアマガエルが発見され、話題になりました。その後、同市西彼(せいひ)町の長崎バイオパークで展示(てんじ)していたところ、青みがだんだんと薄(うす)れていき、6月初めには体のほとんどが灰色になってしまいました。

青みが薄れ、大部分が灰色になった(6月15日)

 しかし、6月末に展示が終わり、7月3日に松尾教授が見に行くと、何と水色になっていました。前日まで灰色でしたが、3日朝に水色に変わっていて、飼育員(しいくいん)もとても驚(おどろ)いたのだそうです。その後、アマガエルを譲(ゆず)り受けた松尾教授は「青ちゃん」と名付けて観察を続け、毎日、日光浴をさせています。
 青ちゃんが珍(めずら)しい青色なのは、親から子に形質を伝える「生命の設計図(せっけいず)」である遺伝子(いでんし)に変化が起きた突然変異(とつぜんへんい)とみられています。一方、青みが薄れ、灰色に変わったのは、普通(ふつう)のアマガエルにもみられる体色変化ではないかと考えられています。
 その色の変化の原因(げんいん)としては、展示会場から別の飼育ケースに移(うつ)されたことや、光の当たり具合が変わったことなどがいわれていますが、はっきりとしたことは分かりません。
 4月の発見当時の体長(約4.5センチ)から3、4歳(さい)ぐらいの成体とみられています。松尾教授も青いアマガエルは初めて見たそうで、「この目立つ色で、敵(てき)だらけの環境を何年も生き抜(ぬ)いてきたことは奇跡(きせき)的」と驚きを隠(かく)しません。
 カエルといえば「無事帰る」「お金が返る」などの語呂(ごろ)合わせから、カエルを使ったグッズは縁起物(えんぎもの)として人気です。松尾教授は「青ちゃんは幸せを運んでくれるかも」と話し、笑顔を見せました。

■体色変化とは 三つの細胞が関係

松尾教授は体色変化について、次のように解説(かいせつ)してくれました。

 ニホンアマガエルの皮膚(ひふ)の下には、基本(きほん)的に色に関係する三つの細胞(さいぼう)があります。皮膚に近い方から順に(1)黄色素胞(おうしきそほう)(2)虹(にじ)色素胞(3)黒(こく)色素胞の3層構造(そうこうぞう)です。突然変異によって生まれつき、いずれかの色素を持たない変わった色のカエルが見つかることがあります。

同じアマガエルでもこんなに色が違(ちが)う。中央が青ちゃん=長崎市弥生町、長崎女子短大

 普段(ふだん)見かけるアマガエルは(1)が持つ黄色の色素と、青色の光を反射する(2)が働き合って緑色をしています。青ちゃんの場合は黄色の色素を持たないので、青色の体になったのです。
 ちなみに、黒色のメラニン色素がない場合、アマガエルの体色は黄色やクリーム色になります。目が赤いのも特徴(とくちょう)的です。

黒色のメラニン色素を持たない黄色いアマガエル

 アマガエルは先に説明した三つの色素胞によって、周りの環境に合わせて体の色を変える「体色変化」ができます。敵から身を守るため、草の上では鮮(あざ)やかな黄緑色、コンクリートの上では灰色のまだら模様(もよう)、地面にいるときは土の色に近い茶色というふうに、周りに合わせた「保護(ほご)色」にして目立たないように生活しているのです。突然変異種の青や黄色だと、どこにいてもすごく目立つので、生きていくのが難(むずか)しいのです。
 では、どうやって体の色を変えるかというと、まず、目などから光や色を感じることで周りの環境をしっかり読み取ります。すると、体の中の情報(じょうほう)伝達物質であるホルモンが働きだし、黒色素胞の中のメラニン色素が広がったり縮(ちぢ)んだりします。体色はメラニン色素が広がると暗く濃(こ)い色に、逆(ぎゃく)に縮むと明るく白っぽく見えるのです。30分~1時間ほどかけて、ゆっくり変身しますよ。
 カエル以外にも体の色を変えられる生きものはいます。例えば、イカやカメレオンはごく短い時間で変身してしまいます。カエルがホルモンによって色素胞に働きかけるのに対し、これらは脳(のう)からの指令を電気信号で伝える神経(しんけい)細胞によって制御(せいぎょ)されているので、素早(すばや)く色を変えることができるのです。


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