位牌製作CMで注文倍増 手彫り技法公開、全国展開 諫早「お佛だんのむらた」 HPに動画も

テレビCM向けに撮影される手彫り位牌の製作状況=諫早市、お佛だんのむらた(タウラボ提供)

 九州で数少ない手彫りの位牌(いはい)を製作、販売する長崎県諫早市の「お佛だんのむらた」(村田好隆社長)。この春、手彫り位牌の製作過程を収めたテレビコマーシャル(CM)を導入したところ、全国各地から同社ホームページ(HP)に注文が急増。コロナ禍による消費低迷が叫ばれる中、「本物」を追求する消費者の心をCMとHPでつかみ、新たな顧客獲得と全国展開につなげた。

 同社は1969年、市内で創業。90年代のバブル期、仏壇や位牌も機械化や海外生産が進み、価格競争の波にさらされた。しかし、同社は専属の職人が作る仏壇や位牌の材質などにこだわり、顧客の満足度を高める商売を貫いた。
 位牌製作は、書道師範である村田社長の妻、育子さんが戒名などを下書きした後、村田社長が朱色の文字を薬研( やげん )彫りという独特の技法で彫り進める。価格は2万~50万円台と幅広い。
 HP上での受注は2018年初めから開始。材質や形を選んだ後、専用の注文書に故人の戒名や命日、宗派、納期などを記入して同社に送り、料金支払い後、製作に入る流れ。村田社長は「一度も話さないまま作るのは気が引けるので、(注文者に)電話で具体的な仕上がりを伝えている」と“非対面”の接客にも気を配る。
 長年続けていた紙媒体(折り込みちらし)による広告宣伝に限界を感じ、今年春、手彫り位牌のCMを制作、県内の民放で放映。同社HPでも位牌の製作過程を収めた動画を公開した。
 すると、来店者やHPの注文者の年代、居住地が変わり始めた。来店者は従来、諫早市や島原半島の中高年層が中心だったが、長崎市や県北地区に拡大。20~30代からも問い合わせが増え、HP注文も九州各県や首都圏から相次ぐ。
 手彫り位牌の注文数、売り上げは今年8月だけで前年同期比約2倍増。村田社長は「コロナ禍で外出控えが増え、CMで手彫りのよさを知ってもらい、従来のHP注文スタイルが生かされた」とデジタル戦略転換に手応えを語る。
 HPとCMをプロデュースしたタウラボ(諫早市)の田浦健吾社長は「長年、いいものを取り扱い、手彫り位牌という強みを持っていたからこそ。厳しい時代に思い切って攻めに転じたことで、面白い結果が出ている」と分析する。
 むらた(電0957.23.1116)、HPアドレス(https://www.obutsudan-murata.com)。

位牌に一文字ずつ丁寧に彫る製作風景(タウラボ提供)

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