九州の魅力ぎっしり  JR観光列車「36ぷらす3」運行開始 長崎発ルートに試乗 九州の魅力ぎっしり

黒光りする「36ぷらす3」の車体=長崎市、JR長崎駅

 16日から九州を周遊するJR九州の新型観光列車「36ぷらす3」。全5ルートのうち唯一、夕食時に運行する長崎発博多着列車に記者が試乗した。高級感漂う内外装が旅情をかきたて、地元にこだわる味覚や趣向を楽しめた。

 黒光りする車体に金色に輝く鋳造のロゴ。車窓の枠は組子細工。格子の天井に、畳敷きや寄せ木の床。かつての車両にあったビュッフェが復活し、九州産の酒や菓子を味わえる。個室のほか、3列のゆったり座席もある。
 5日間で九州を1周する。ルートごとにイメージカラーを設定した。木曜は博多から熊本を経て鹿児島に至る「赤の路」。金曜は宮崎着の黒、土曜は大分着の緑、日曜は小倉を経由し博多に戻る青。そして月曜は博多-長崎を往復する「金の路」。走行距離は計1198キロ。世界一壮大な輪を描くというコンセプトだ。「ななつ星」を彷彿(ほうふつ)させる豪華仕様の一方、利用層の裾野を広げるため1日利用や途中下車も可能にした。
 風変わりな名称にはこんな思いを込めた。世界で36番目に大きい島、九州を楽しむ35のエピソードを選定。36番目は乗客自身に考えてもらう。乗客と地域住民、社員を「ぷらす3」して「39(サンキュー=感謝)」の輪を広げよう-と。
 運行を前にJR九州は報道関係者向けに試乗会を実施。列車は12日午後5時半、長崎駅を滑らかに出発した。大画面モニターを備えた共有の4号車に乗客を招き、からすみや大村湾の夕日など長崎、佐賀両県の金色にまつわる7のエピソードを、乗務員がクイズを交え紹介。乗客の回答も披露した。
 順風な“発車”ではない。新型コロナウイルスで観光需要が低迷。熊本-鹿児島は豪雨で一部不通のまま、1周運行は来月以降にずれ込む。客室乗務員の江副希美さん(35)は「どうなるか心配したが、沿道で手を振る人がたくさんいて期待を感じる」と話した。
 運ばれてきた竹組みのお重を開けると、フグの唐揚げやクジラのベーコンなど本県産を中心に約30のおかずがぎっしり。他の昼間コースでは車内イベントや体験メニューもある。博多-長崎の片道基本代金は食事付き個室の場合1万8500円(子ども1万5千円)。この列車には九州の魅力が詰め込まれている。

個室でいただくお重。本県産食材にこだわっていた
天井や窓枠を格子にした「36ぷらす3」の4号車。大画面モニターもある

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