移ろいの季節

 天気予報が外れると、故桂枝雀さんは高座で笑いを誘ったという。「気象庁の野球大会が雨で延期されたそうでございます」。気象予報士が聞いたら、苦笑いしただろう▲時代は移り、人工知能(AI)を使ったり大量のデータを生かしたりして、天気予報はずいぶん正確になった。スマートフォンで予報を見れば、現在地の空模様の変化が1時間おき、5分おきに表示される▲予報通りの時刻に雨粒が落ち始め、驚いたこともある。近頃は「当たらない天気予報」が笑いの種になることもないだろう▲「秋の空は七度(ななたび)半変わる」という。秋の空模様がころころ変わることの例えらしい。このところ天気に目まぐるしい変化はないが、この先は冷気に覆われる日も増える。刻一刻と天気や気温の移ろいを知らせる天気予報から目が離せない▲長崎では「くんちの頃は衣替えの頃」といわれる。寂しいかな、今年の長崎くんちは奉納踊りがなかったが、それでも例年通り、くんちの頃から周りで長袖姿が目立ってきた。人の姿、街の景色にも移ろいを感じる▲「七度半変わる」は気まぐれな心にも例えられる。「あの人は言うことがそのたびに違うね」「まったく『秋の空は七度半変わる』だよ」…。ころころ変わる心よりも、願わくばあんな心で-と澄んだ青空を仰ぎ見る。(徹)

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