「西海橋」重要文化財に 文化審が答申 長大橋建設の出発点と評価

国の重要文化財に指定するよう答申された西海橋(手前)。右の佐世保市側には指定済みの針尾無線塔がある=西海市西彼町(小型無人機ドローン「空彩4号」)

 国の文化審議会(佐藤信会長)は16日、長崎県佐世保市針尾島と西海市を結ぶアーチ橋「西海橋」を重要文化財に指定するよう萩生田光一文部科学相に答申した。戦後に架けられた橋が指定されるのは初めて。
 西海橋は長さ316メートル。約5年の歳月と総事業費約5億5千万円をかけ1955年に完成した日本初の有料道路橋。当時「陸の孤島」と呼ばれた西彼杵半島の交通事情を変え、長崎と佐世保を結ぶ最短ルートとなった。
 完成時、西海橋はアーチ橋としては日本最長。戦後の資材難の中、鋼材の使用を最小限に抑えて設計した。繊細で美しいアーチの形状が特長。施工時には針尾瀬戸(伊ノ浦瀬戸)の流れが速いため、海上に支柱を設けず、両岸から組み立て中央で結ぶ世界初の工法を用いた。
 文化審議会は設計、制作、施工すべての面において卓越した技術が駆使され、関門橋や明石海峡大橋など戦後日本の長大橋建設の出発点が西海橋だったとし、架橋技術と歴史的価値の両面で評価した。
 県教委によると、指定により県内の国指定文化財建造物は37(国宝3、重要文化財34)となる。佐世保市は3件、西海市は初めて。
 朝長則男佐世保市長は「所有者の県、橋が所在する西海市とともに、貴重な文化財として保存活用に尽力したい」、杉澤泰彦西海市長は「本市の発展の礎を築いた特別な橋。価値の発信に努めたい」とそれぞれコメントした。

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